webマガジン「マカロニアンモナイト」
月刊特集
『レトロ人着写真館』前編文・写真/中山慶太
1998年12月掲載
§お次は調色写真にトライ§
さてさて、人着写真とはいったいどのようなものか。冒頭の老プリンター氏の言葉が気になったので調べてみると、こちらが期待していたような“写真に直接色を塗る”行為とはかなり趣を異にするようだ。
人着(東京の名称、関西では『イミテ』と呼んだらしい)写真とは、スチール写真を複写ししたフィルムから、カラー製版に使う三原色(+1色)の製版フィルムをつくるテクニックらしい。このカラー製版の三原色については次項で述べるが、手っ取り早く言うと世の中のカラー印刷物は赤・青・黄色の三原色(+黒色)のドットの組み合わせでできている。これはオリジナル原稿(カラーポジが一般的)を製版スキャナーで三原色+黒色に分解するためで、原理的にはこの四色のかけ合わせでほぼすべての色を再現できる、ということになっているのだ。
で、その昔カラーフィルムや製版スキャナーが今ほど性能が高くなかった時代の話。すでに技術的に成熟していたモノクロフィルムを使ってスチール写真を複写し、そのフィルム面を手作業で削り、あるいは加筆して三原色に分解したのと同等の効果を得ていたという。なるほど往年の映画ポスターのどこか版画的な色彩は、この“想像された天然色”ともいうべき手仕事によって生まれたものだったのだ。
それにしても、仕上がりを想像しながらフィルムを削るとは! 同じようなことをやる技術も知識も勇気もない僕は、調色を試みてみることにした。調色とは、プリントの現像時に薬品を使ってモノクロプリントに色を付けるテクニックだ。これは旧くからある手法で、市販の薬品を使えば簡単に色付きプリントを得ることができる。ただし暗室は必要で、ここが難関。
同様の効果は、実は暗室なしでも可能である。モノクロのプリントを、カラーフィルターを使ってカラーフィルムで複写する。これでも見た目には変わらない調色プリントが得られる。難点は色のバリエーションが少ないこと、そして階調が圧縮されてしまうことだが、色セロファンとか、プリント時の指定でなんとかなる。
ところが、最近は暗室を持たない人間もスマートな調色処理ができるようになった。電子暗室、つまりパソコン上で画像処理ソフトを使って同様の効果を得るのだ。これを手抜きと言うなかれ、微妙な色調を追求するプロの広告写真の現場でも行われているテクニックなのだから。
で、めでたく調色写真をモノにしたところで、前編は終了。後編はモノクロプリントの総天然色化にチャレンジします。乞うご期待。
作例4 調色の色調はオリジナルのコントラストを見て決める。勘がつかめるまでは硬軟いろいろな調子で焼いておくといいと思う。作例はフィルム上で軟調にするため、旧ソ連製の中望遠で撮影した。F1.5の大口径だが、開放からひと絞りの間はソフトフォーカスになる(球面収差が大量に残っている)という変なレンズだ。ヘリオス40-2 85mmF1.5、絞り解放、1/60秒、ネオパン100プレスト。
作例5 作例1のバリエーション。露出もフレーミングも変わらないが、調色するとこれだけ印象が変わる。ところで電子暗室での調色はカラー原版からでも可能だけど、モノクロの方が撮影時の意図が生かせると思う。 180mmF2.8、絞りF3.5、1/60秒。ネオパン100プレスト。
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