マカロニアンモナイト
webマガジン「マカロニアンモナイト」月刊特集
『本気のリバーサル特集』-前編-


文・写真/中山慶太

前編目次 1 2 3 4 5 2000年2月掲載


§リバーサルは積極的に使おう§

 さて、とりあえず難しい理屈は抜きにして、いつも使っているネガカラーの代わりにリバーサルをカメラに詰めてみよう。それで普通に撮影して現像に出せば、通常のネガプリントとはひと味違う発色とすぐれた立体感を持つ、リバーサルならではの仕上がりが得られる。「なあんだ、けっこうカンタンじゃないか」と、いっしゅん自分の腕が上がったような気がするはずだ。

 が、子細に観察すると露出の失敗がいつもより多く見つかると思う。画面全体が明る過ぎたり暗過ぎたり、あるいは「人物の肌がもうちょっと明るくなれば」というような不満である。なぜそうなるのか。それはリバーサルが光の量に敏感に反応し、しかも明暗差をやや強調して記録する高コントラストのフィルムだからだ。光が適正な量より多過ぎれば画面は白っぽく飛び、少な過ぎれば暗くつぶれる。この手の失敗はネガカラーのプリントではなかなか発見できないことだ。つまりリバーサルはネガカラーに比べると露出がシビアで、ごまかしがきかないのである。

 反面、このシビアさこそがリバーサルのいちばんの魅力である。露出を意図的に切り詰めて画面を引き締めたり、逆に明るく飛ばしたりという表現効果がフィルム面でダイレクトに観察できるから、撮影者の創意が込めやすい。また色変換フィルターなどの効果も、ネガカラーに比べるとはるかに手軽に得られる。

 リバーサルのもうひとつの利点は、失敗の原因がつかみやすいことである。カメラまかせで撮った場合にありがちな、『逆光時の露出アンダー』『黒い被写体の露出オーバー』などが正確に再現されるから、写真撮影の基本的なお約束ごとが体感的に理解できるようになる。また、カメラが持っている固有の癖もつかみやすい。だからリバーサルを使っていると、自分で露出をコントロールしたいという積極的な意識が芽生えるようになるはずだ。リバーサルは最良の教師でもあるのだ。けっこう厳しいけど。

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作例5:
Renato e Ezio Trinchero/9911

夕暮れの赤みを帯びた光をフィルムの発色特性がさらに強調する。彩度の高いベルビアを使うときは、作画の意識をはっきり持たないと派手になりすぎるかもしれない。とはいえネガカラーで同様の色調を得ようとすると、プリントはかなり苦労するのではないだろうか。イタリア北西部、モンフェラート丘陵のワイナリーでオーナー父子を撮る。『トリンケーロ』はこの地方を代表する造り手で、背景の畑には樹齢70年というバルベーラ葡萄の老木が植わっている。

135format 35mmF1.4 1/60sec. F5.6 FUJICHROME VELVIA (RVP)



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作例6:
Caproni ca.163/9912

コントラストの高いリバーサルは、金属の質感表現も得意とするところ。ディテール感を強調したいときは露出をややアンダー目に振ると効果的だ。ところでこの機体『カプローニca.163』は珍しい純イタリア製の全金属製試作複葉機で、昨年末にイタリア北西部トレントの博物館で遭遇したもの。半世紀以上前の機体だが、保存状態は完璧。ストロボ禁止の館内で三脚を立て、夢中になって撮っていたら設計者の娘のカプローニ伯爵夫人にお茶に呼ばれた。

135format 24mmF2 15/sec. F5.6 FUJICHROME ASTIA (RAP)

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