マカロニアンモナイト
webマガジン「マカロニアンモナイト」月刊特集
『本気のリバーサル特集』-前編-


文・写真/中山慶太

前編目次 1 2 3 4 5 2000年2月掲載


§デジタルの対極にあるもの§

 はじめて自分で写真を撮った時のことはとうの昔に忘れてしまって、手にしたカメラも撮った被写体も覚えていないけれど、使ったフィルムは確かモノクロだった。今をさかのぼること三十数年前、子供にとってカラー写真はちょっとした贅沢品だったのだ。

 という昔話はさておき、時代は下ってミレニアムを間近に控えた年の瀬のお話。事務所の冷蔵庫から酒瓶を出そうとすると、ボトルの隙間に押し込められたフィルムは大半がカラーリバーサル、つまりカラースライド用のポジフィルムなのだった。これって、やっぱり普通の写真好きのひとたちからみれば、妙な世界なんじゃないのか。

 忘年会で飲んだおりに居合わせた仕事仲間に訊いてみれば、リバーサルを使ったことのない人間もけっこう多い。「仕事柄、印刷原稿として扱うのはしょっちゅうだけど」とデザイナーのG。「確かに色は綺麗だけどぉ、コンビニで売ってないし撮り方もよくわからないしぃ」とS子ものたまう。「俺、プロだからリバーサルとは長いつき合いだけど、ネガプリントみたく気軽に観れないからフツーのひとには不便かなあ」とつぶやくのは、スタジオ系カメラマンのHである。

 なるほど、考えてみれば仕上がりの確認はもちろん、撮り直しまでもその場でできるデジカメが隆盛の昨今、リバーサルは写真趣味の極北に位置しているといえるかもしれない。だが、お気軽さの対極にあるイメージとはうらはらに製品のバリエーションは増え、リバーサルならではの楽しみ方もアマチュア層に着実に浸透しつつあるという。そこで今月と来月のビジュアルスタジオでは、突然の『リバーサル特集』を組むことになりました。この種のフィルムを使ったことのない方、ご用とお急ぎでなければぜひご覧ください。

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作例1:
ritoratto d'Alessandra/9911-1

クラシックカメラのレンズは、絞り開放付近ではシャープネスが不足する。これはレンズの光学性能としては欠点なのだけど、高いコントラストを持つ現代のリバーサルフィルムと組み合わせると甘過ぎず硬過ぎずの、気持ちの良い軟調描写が得られる。リバーサルで格別にやわらかいトーンが欲しいときは、古いレンズで絞りを開け気味にして撮ってみるのも面白いと思う。イタリア北西部、ランゲ丘陵の隠れ家ホテルにて。オーナーの娘アレッサンドラをモデルに撮った一枚。背景の油彩は彼女の作品。

6×6 80mmF2.8 1/30sec. F4 FUJICHROME ASTIA (RAP)



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作例2:
ritoratto d'Alessandra/9911-2

作例1とおなじ銘柄のフィルムで、カメラを変えて撮影。アスティアは滑らかなトーンと落ち着いた発色を持つフィルムだが、作例1と比較すると明らかにコントラストが高い。レンズ描写の微妙な違いを楽しむにはモノクロが最高といわれるけど、リバーサルの敏感な反応もまた違った面白さがある。

135format 50mmF1.2 1/30sec. F2 FUJICHROME ASTIA (RAP)

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