『Hyper Landscape part1』
 
  −身近な風景で遊んでみよう−
              −前編−

 文・写真/中山慶太


§色物レンズを使ってみよう§

 さいきん風景写真の愛好家に人気の高いレンズといえば、300mmとか500mmとかの超望遠だという。それは遠景を引き寄せるというより、風景のなかの気に入った部分だけを切り取るために使われているようだ。あんな重いレンズを担いで撮影ポイントを捜すなんてとんでもない、と思っていたら、実際に秋の行楽地ではスポーツの報道席さながらの砲列が敷かれるらしい。やはり風景写真は体力勝負なのだ。
 そういう根性のない人間は、つい逆の方を向きたがる。どうせなら思いっきりひねくれたレンズで撮ってみようと、機材ケースをかき回していたら面白いレンズが出てきた。フィッシュアイ16mm、いわゆる『魚眼レンズ』である。
 昔から35mm一眼レフの交換レンズには“イロモノ”と呼ばれるジャンルが存在する。誰もが一度は使ってみたいと思い、ものの弾みで手に入れて一度使うと機材置き場の苗床と化す物品である。魚眼レンズ、ソフトフォーカスレンズ、500mm反射望遠などはその代表格で、色物三羽ガラスとも呼ばれる。真面目に設計しているレンズ技術者には失礼な呼び名だが、どのレンズもアクが強すぎて手に余るということだろう。
 で、今回はなんとなく魚眼レンズを使うことにする。筆者が所有しているのは対角魚眼というやつで、フィルムの中心部に円形の像を結ぶ『全周魚眼』と違い、フィルムの全面に像を結ぶタイプ。前者ほど極端な歪曲効果はないけれど、画面の中心点を通る以外の直線は見事にぐにゃぐにゃ曲がる。どういう像を結ぶのかというと、見通しの悪い交差点に置かれているカーブミラーと同じである。こんなクセ玉でまともな風景写真が撮れるはずはないから、良識のある写真家なら別の交換レンズもちゃんと持って出かけるところだ。
 だが、そうやってまともなレンズを持って撮影に出れば、結局イロモノの出番はなくなるのである。体力がないなら根性(←死語だ)でカバー、というわけで今回は魚眼一本で勝負に出ることにした。それにしても、果たして誰と勝負しようというのか。どうにも訳のわからないままである。

 

<作例3>
横浜、みなとみらい21地区。この日は待ちに待った雨。普通の神経を持ったひとなら雨の日は撮影を避けるはずだけど、これはもったいない話である。カメラとレンズが濡れないよう気を遣う苦労はあるが、雨上がりの風景が持つ独特の色彩感はその苦労を補って余りあるからだ。左上のビルの歪曲を除けば、魚眼特有のクセはそれほど気にならない。

135format Diagonal-Fisheye 16mmF2.8 1/8sec. f5.6 Fujichrome Astia (RAP)

 

<作例4>
横浜、みなとみらい21地区の桟橋。筆者はこういう濡れたデッキの質感が大好きで、アングルを変えていろいろ撮ってみた。結果は……。こういう場合は直線が素直に真っ直ぐに描写される超広角レンズを使った方が遥かに美しい絵になるだろう。魚眼の歪曲効果が目障りな失敗例。

135format Diagonal-Fisheye 16mmF2.8 1/8sec. f4 Fujichrome Astia(RAP)

 

<作例5>
横浜。魚眼のクセを構図でカバーしようと悪戦苦闘、どうにもうまくいかないまま日が暮れようとしている。で、開き直って歪曲を前面に出すとスッと良い絵が撮れるではないか。クセ玉を使うときはアタマで考えすぎないことがコツらしい。海面の模様は水上バスのスクリューが遺した泡。丸い海がクジラの背中みたいで、好きな一枚。

135format Diagonal-Fisheye16mmF2.8 1/8sec. f5.6 Fujichrome 64T2 (RTP2)

 

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<作例4>


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<作例5>



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