webマガジン「マカロニアンモナイト」月刊特集
『ammonite pinhole photographs』
アンモ針穴写真館2
(後編)

文/写真:中山慶太柴山みゆき
1 2 3 4 5 6 7 8 9 2001年3月掲載


§撮影距離には要注意§

 ピンホール写真の特性として、画面上のすべての部分にピントが合う『パンフォーカス』効果があることはよく知られている(ピントが合うといってもご覧の通りのモヤモヤだけど)。

 だから背景をぼかして主題を強調、というようなテクニックはいっさい使えない。風景写真はそれでいいとして、ポートレートはちょっと困らないか? 今回の特集を通してアンモ編の柴山みゆきに付き合ってもらったのは、実はそのへんがどうなのか興味があったからなのだ。が、じっさいに撮ってみるとぜんぜん問題ないことがわかった。

 これが普通の35mmカメラのようにピントがキリキリの写真だったら、入り組んだ背景は見苦しくなることが多いのだけど、画面全体が甘いピンホール写真ではそのあたりがうまく馴染んでくれる。 パンフォーカスというよりも『パンソフトフォーカス』というべきか。

 だからといってあまり撮影距離に無頓着になると、べったりと立体感に欠けた写真になってしまう。それも悪くはないのだけどけれど、平板な描写が効果的なケースはあまり多くないはず。人物写真の場合はなるべく手前に主要被写体を配置して、背景とのコントラストに差を付けておくといいと思う。この場合、針穴の画角と遠近感をよく考えて撮ると画面に奥行きが出てくる。

 もうひとつの注意点として、ピンホールは普通のレンズと違って最短撮影距離というものがない。マクロレンズも顔負けというくらい被写体に寄れるのだけど、あまり調子に乗って寄りすぎると露出不足になる。これはマクロレンズを使った接写の場合も同じで、被写体の光量が相対的に不足するからだ。撮影倍率から露出倍数を割り出して補正をかけることはできる(最近のAFマクロレンズはROMが内蔵されていて、この露出補正は不要な場合が多い)けれど、ただでさえ面倒な計算がますます複雑になるのでお勧めできない。計算に強い人はぜひ挑戦してください。


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<作例6>
白樺の枯れ木の下。枝の滲みがマゼンタ系の色になって美しい。人物の顔はもうすこしシャープネスが欲しいところ。もっと小さいピンホール(今回の針穴は直径0.3mm)を使えば解像力は増すけれど、枝の滲みは少なくなるし、露出時間は長くなるしで難しいところ。
自作4×5ボディ+ピンホール、焦点距離75mm(35mm判換算=20mm)、絞りF250、露光時間8秒、Fujichrome Astia (RAP)4×5。


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<作例5>
桜の樹の満開の下。青紫のカブリと花の色調、それにピンホールの周辺光量落ちの相乗効果がちょっとイイ感じ。アンモ編オリジナル暗箱『針穴壱号』は相変わらずファインダー未装備で、これくらい被写体に寄ると構図決めが難しい。まあ外付けのファインダーを付けたところで、近接撮影ではパララックス(針穴とファインダーの光軸ずれによる視差)が盛大に出るはずだから、あまりシビアに考えない方が無難かも。
自作4×5ボディ+ピンホール、焦点距離75mm(35mm判換算=20mm)、絞りF250、露光時間6秒、Fujichrome Astia (RAP)4×5。


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<おまけ3>
普通の35mm一眼レフで撮った比較例。花や肌の色は見た目に忠実だが、このフイルム(アスティア)の特性でやや暖色系の落ち着いた色調だ。ベルビアを使えばピンホールに近い色になるかも。ところで柴山みゆきの顔には弱いレフを入れてある。レフ板は近くで写真を撮っていた年輩の女性に持っていただいた。感謝。
35mm一眼レフ、焦点距離20mm、絞りF4、露光時間1/250秒、Fujichrome Astia (RAP) 135。
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マカロニ・アンモナイト編集部