『ammonite virtual dark-room』
 
  −アンモ電子暗室計画1−
            −前編・着工編−

 文・画像処理/中山慶太  
 撮影/中山慶太+ウチダモモコ


§建築青写真§

 ひと昔とちょっと前までは、映画を観て力の入った特殊効果シーンになると「お〜凄いスゴイ、どうやって撮ったんだ」とアタマを捻ったものだった。
 その当時はまだ、怪獣は人間が中に入り、ミニチュアの建物や戦車を壊すのが当たり前だった時代だったのだ。
 ところがさいきんでは、隕石が地球に衝突しようが恐竜が復活しようが、撮影の技法や現場の苦労に思いをめぐらすことはなくなった。だってデジタル合成の時代だもの、いくら目を凝らしても戦闘機を吊り下げるピアノ線なんか見えませんって。
 そう、今はゼロと1の配列で何だってできてしまうのである。それも、あなたがたった今操作しているパソコンと大差ない機材で。
 だから映画やテレビを観ている方としては面白味が減ったか、といえばそんなことはない。むしろ余計な雑念が入り込まなくなったぶん、純粋に作品を鑑賞できるようになったかもしれない。
 もうひとつ変わった点として、撮影技法の制約が(完全に、ではないにせよ)取り払われたことにより、制作者の意図するイメージがダイレクトに伝わりやすくなったということだろうか。
 だから映画はデジタル技術を得て作家のイマジネーションを拡大することが出来たのだ、というような話を最初に振ったのはほかでもない。この『ビジュアルスタジオ』でもそろそろデジタル画像処理の特集をやらなければ、という情勢になってきたからなのだ。
 読者からの要望が多いにもかかわらず、これまでそういうテーマをほとんど採りあげなかったのは、この担当者が筋金入りのアナクロ、いやアナログ人間だからというだけの理由ではない。デジタル画像処理の話をすると、どうしてもグラフィック系ソフトウェア(レタッチツール)の使い方に触れる必要があり、しかもそれがけっこう高価で普通に写真を愉しむ向きには一般性が欠ける、ということだったのだ。
 でも、さいきんはデジカメの普及のお陰でこの種のソフトも随分と安価な製品が出回るようになった。デジカメをお使いの方なら大抵は画像処理ツールのお世話になっているだろう、ということでいよいよ始めます、デジタル暗室講座。不定期連載の形式でも長く続けるつもりなので、ご贔屓にしていただきたいのである。
 なお、それぞれの処理のプロセスについてはお手持ちの画像処理ソフトの使用法をご参照いただきたい。今回は大抵のツールで出来そうな手法に限定しているので、デジカメのスナップを処理する際にも参考になるはず。

 さて、第一回目にあたる今回はパソコンに取り込んだ画像に初歩的なレタッチをしてみることにしよう。
 まずはごく普通の? スナップ写真に手を加える。筆者は気軽なスナップが苦手なたちなので、撮影は英国帰りの小娘1号、ウチダモモコに依頼した。一眼レフは初めてという彼女にいきなりマニュアル露出の全金属製カメラ+ロシア製超広角レンズを渡して(流石にフイルムは普通 のネガを詰めておいたが)これで撮って、という無茶なオーダーである。露出はおろか「ピントの合わせ方も知らない」というド初心者の写 真を画像処理で面白くする、という目論見があったのだが、出来上がった写 真はレタッチなしでもイケてる。今日びの小娘はなかなか侮れないのであった

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<作例1>
早咲きの桜。細い枝の間が不思議な滲み方を見せているのは恐らくレンズのフレアと収差のためだが、けっこうイイ味が出ている。ちなみに今回のロケ地はおなじみの上野公園。この公園は正式名を上野恩賜(おんし)公園といい、もとは寛永寺の境内だった。広い園内には博物館や美術館、社寺仏閣が点在し、カメラ散歩には最適だ。ネガフイルムからのオリジナルスキャン。(撮影:ウチダモモコ)35mm一眼レフ+20mmF3.5、絞りF5.6 1/125sec. Fujicolor Superia100。

 

 


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<作例2>
細い枝と花、そして滲みが和風のパターンに見えて面白かったので、この方向を強調してグラフィック処理をしてみよう。スキャンデータをレタッチソフトに取り込み、全体の彩 度を思い切り上げる。周辺の緑と黄色が効果的な縁取りになって、なかなか良い雰囲気に仕上がった。

 

 


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<作例3>
空に僅かに残ったトーンをぎりぎりまで使って色調を変換する。基本的に濃度が無い部分(真っ白の部分)とグレー階調の部分は色変換が難しいので、そのあたりを見極めて作業しよう。仕上がりは版画調。紫の階調推移がなかなか渋い色調で、来年の年賀状にどうだ。



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