定点写真を愉しもう

 文・写真/中山慶太



§見慣れた風景のドラマを愉しもう§

──撮影地点に戻り、地面のマークに合わせて三脚を立てる二人。

●銀塩博士:さて、ちょうど良い具合に暗くなってきたぞ。(カメラバッグを手で探って)はて、ケーブルレリーズはどこに入れたかな。

●助手一号:スミマセン、忘れてきました。

●博士:……まったく、この粗忽者が。やむをえん、セルフタイマーを使おう。

●助手:セルフタイマーがレリーズがわりになるんですか。

●博士:うむ。要はシャッターボタンを押すショックが、カメラに伝わらなければ良いのじゃて。

●助手:なあるほど。

●博士:定点写真で三脚は必須じゃが、こういう暗い条件では用心に越したことはない。億劫がらずにレリーズを使うことじゃよ。さて、帰るとするか。


──数日後、アンモ事務所でアガリを観る博士と助手。

●助手:ふうん、街角に立っているとそれほど光の条件が変わったように感じなかったけど、1時間の差でけっこう印象が違うものですね。

●博士:そうじゃろう。

●助手:でも、なんか面白みがないなあ。構図をいい加減に決めたからじゃないですか。

●博士:ぎくっ。まあ今回は、身近な風景で光の変化を愉しむという企画じゃからな。

●助手:僕は身近な風景でも、もうちょっとドラマチックな写真の方が好きですけど。

●博士:ふむ、良いところに目を付けたな。感心感心。
(と、引き出しから別のポジを取り出してビュアーに載せる)

●助手:あれ? これは博士んちの、ご近所の交差点ですね。

●博士:うむ。おとといの夕方、わしの家のベランダから撮った写真じゃよ。明るい方が午後3時半で、暗い方は午後5時半じゃ。

●助手:銀座の写真とおなじ時刻ですね。でも、なんか変だなあ。小学校の横の、人通りの多い道なのにだれも歩いてないし、信号機は赤と青が両方点いているし。

●博士:それはじゃな、明るい方の写真も長時間露出をしたので、動いているものはみんな画面から消えたのじゃ。

●助手:なあるほど。たしかにこっちの写真の方が不思議な感じがするし、空に表情があってイイ感じです。

●博士:そう、単純な風景にほんの少し変化があると、なかなか味わい深い写真になるな。

●助手:身近な風景も定点写真にして並べると、そういう変化が愉しめるってことですね。

●博士:うむ。それと、長時間露出で動くものを消し去ってしまえば、例えばクルマが一台も走っていない首都高速なども撮れるぞ。

●助手: でも、こんな明るさで長時間露出をするには、よほど感度の低いフイルムを使わないといけないんじゃないですか。

●博士:それがな、簡単にできるんじゃよ。
(と、さらに引き出しを開けて何かを取り出す)

●助手:おおっ、これはもしかするとっ。

●博士:……『MIKAの部屋』じゃないんだから、大げさなリアクションはいらんと言っとるのだ。


<--Back   Next--> 


拡大表示--> 

夜景の長時間露出では、クルマのテールライトが尾を引いて画面に変化を与える。こうやって観ると、街角の照明の光源にはいろんな種類があって面白い。夕方の遅い時刻で、空が完全な暗黒になる一歩手前で撮るとよりドラマチックになる。
40mmF3.5 絞りF8 1/60sec.
 FUJICHROME MS100/1000 pro(RMS)ISO400で撮影

 


拡大表示--> 

NDフィルターを使って光量を落とし、長時間露出をしたもの。下校途中の小学生や自転車、クルマなどの動く物体は画面から消失した。
40mmF3.5 絞りF8 15sec.
 FUJICHROME MS100/1000 pro(RMS)ISO400で撮影

 


拡大表示--> 

これがNDフィルター。これは二枚とも減光効果の強いもので、背景のケースの文字がまったく読めない。もっと効果の弱いものもあります。
(デジタルカメラによる撮影)




Webmaster :
ammo@tokyo.fujifilm.co.jp
Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部