定点写真を愉しもう

 文・写真/中山慶太



§銀塩写真は定点写真の夢を観るか?§

──ある日曜日の夕方、アンモ編集部の暗室(兼・用具置き場)。助手一号が雇い主の銀塩博士を捜している。

●助手一号:ぎんえんはかせ、何してるんですか。こんなところで。

●銀塩博士:いや、トツゼンだが今月のアンモで『定点写真』を取り上げることになってな。それでちょっと捜し物をしとるんじゃよ。

●助手:て〜てんしゃしん? なんすか、それ。

●博士:読んで字のごとく、カメラをおんなじ場所に据えて、時間の間隔をあけて撮る写真のことじゃな。

●助手:ふうん。なんか面白いんですか、そんなことして。

●博士:それは何を撮るか、テーマによって違うじゃろう。まあオーソドックスな定点写真というのは、建築物が出来上がっていく過程とか、風景が四季で移り変わっていく様子とかを記録するものだが。

●助手:またずいぶん気のながい話ですねえ。今からやって、締め切りに間に合うんですか。

●博士:いや、今回は「短時間で撮る定点写真も、けっこう面白いゾ」というテーマなのでな。

●助手:相変わらずお手軽ですねえ。

●博士:馬鹿者。そういう条件の方がかえって難しく、奥が深いものじゃ。

●助手:で、今回は何を撮るんですか。

●博士:うむ。とりあえず銀座に繰り出してみよう。

●助手:やったあ、今日の晩メシは銀座ですね。

●博士:これこれ、このコーナーは『MIKAの部屋』ぢゃないのだぞ。


──銀座の街角、交差点で機材を降ろす助手一号。

●助手:そろそろ日が傾いてきましたよ、博士。早く撮らないとマズイですよ。

●博士:いや、定点写真はしっかりした三脚を据えるのがセオリーじゃからな。

●助手:なるほど、長時間露出をすれば暗くても平気なんですね。

●博士:うむ。まあ、あまり暗いと弊害が出るが、街角には照明が多いので有利じゃ。それに街の風景は夕方のこの時刻から数時間が、空と建物のコントラストに変化がつくから面白いゾ。

●助手:そういうもんですか。それにしてもクルマが多いですね。

●博士:ううむ。今日は日曜日じゃから、ホコテンだと思っとったが。
(三脚にカメラを載せる博士。いきなり夕日の方向にレンズを向ける)

●助手:うわ、そんな方向にカメラを向けたら逆光で街がシルエットになりませんか。

●博士:露出をきちんと取れば大丈夫じゃよ。(と、無造作に何枚か撮ってカメラを三脚から外す)

●助手:ちょっと博士、カメラはそのままにしておかないと構図が変わってマズイのでは。

●博士:いや、そういう堅苦しいお約束は忘れるのが今回のテーマなのでな。レンズが同じなら、画面のセンターを覚えておくだけで充分なのじゃ。 夜景を撮るつもりなら、三脚の位置だけ地面にチョークで印を付けておけば良い。

●助手:いい加減だなあ。

●博士:なにを言うか。さあ、ちょっと早いけどメシでも食うか。

──カメラを担いで街に消える二人。通りがかりのひとが、地面に記された三つの円を不思議そうに眺めている。



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厳密に構図を合わせた定点写真では、時間の変化を一枚の画像に合成して光の変化を観察することができる。左が午後3時半、右が午後4時半の撮影。

35mmF2.5 絞りF8(左右共通)
 1/60sec.(左画面)
1/8sec.(右画面)
FUJICHROME MS100/1000 pro(RMS)ISO400で撮影

 


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午後4時の街。
今回の銀座の撮影には、ちょっと風変わりなレンズを使った。フランス製のANGENIEUX RETOROFOCUSという広角レンズで、1960年代の製品。絞ってもコントラストが低く、現代のヌケの良いレンズとは性能面で比較にならないけれど、独特の柔らかい光が高緯度の街を思わせる描写だ。

35mmF2.5 絞りF8 1/60sec.
 FUJICHROME MS100/1000 pro(RMS)ISO400で撮影

 


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午後5時の街。
こういう条件では露出を決めるのが難しい。カメラの自動露出を使うと思い通りの明るさにならないことが多い。夜景はプログラム露出ではなく、中央部重点測光の出た目にプラス補正をかけていくのが基本。上の作例とはちょっと構図がずれた。

35mmF2.5 絞りF8 2sec.
 FUJICHROME MS100/1000 pro(RMS)ISO400で撮影



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