酒飲みのロクロ体験記−後編−

 文・写真/因幡也寸人(いなば・やすひと)



1 2 3 4 5 6

§酒飲みの次の夢§

 実は酒飲みが体験コースで作業しているとき、ロクロに向かい挽いた器をしげしげと見つめ、サイズを図ったり、切れ目を入れては肉厚具合をチェックしている御仁がいた。
 この方のお話を紹介しておきたい。何度かロクロで挽いた器を切り刻んでは確認し、土の山にしていた。結局、形としては何も残さずじまい。
 覚束ない手付きの飲ンべぇの作品より遥かに出来が良いのにもったいない、いったい何をしているのだろうという興味が沸いてきた。「今日はお終い」の声とともにインストラクターと話し始めたのをきっかけに話しに加わった。

「薄く均等に挽くのは難しいねぇ、大きいものにしようとすれば外側が垂れてきちゃう」
「そうですね。余り水をつけ過ぎると土が柔らかくなり過ぎますし、水をつけないときれいに形がとれないですからね」

 この方は笠間にほど近い石岡市にお勤めの深見丈夫さん(65歳)。もう1年以上、この『笠間工芸の丘』に通ってらっしゃるそうだ。

「神奈川に家があって、今は単身赴任なの。週末に家に帰るのと同じ位の割合で来てるかな(笑)。こうやってインストラクター達といろんな話ができるからね。他の陶芸教室で味わえない面白さだね」

「今ね、30cmくらいの花瓶と大皿に挑戦しているんだけど、なかなか上手くいかない。いろいろアドバイスを受けてやってみてるけど、ピタッと上手くいくことがないんだな。ま、それが良くて通っているようなものだけどね」

----陶芸の魅力ってなんですか?

「やってる間、何もかも忘れてること。無我っていうのかな、純粋に没頭することは普通の生活の中では、そうはないでしょう?」

 確かに創る楽しさ、それは我を忘れて没頭する作業、思い通りに行かないから次がある。その思い入れの大きさと比例して楽しさ・深さがでてくる。それが趣味というものだ。



 割れちゃいけないからな。抱えるように大事に持ち帰った飲ンべぇの皿。サイズは小さくなったけど、きれいな化粧をして戻ってきた。帰る道すがら、何を盛り付けようかな。酒は何がいいかな? 思いはやっぱり、そこにある。
 で、さっそくの酒盛り。水菜と揚げジャコのサラダを白萩に、鉄赤にはハマグリ酒蒸し、ひらめの浅葱巻き、ゆでえびのキャベツロールという肴三種を盛り合わせてみた。
 あー、酒が旨い! 次は冷や酒用の片口とぐい飲みを作るぞ。酔った勢いで件の友人に電話していた。




※『笠間工芸の丘』ふれあい工房の体験コース内容は、ロクロで器を作り、 釉薬の色を指定するまでとなります。
後の工程はスタッフが行い、出来上がりまでに約1.5ヶ月かかります。

<--Back     


拡大表示--> 

完成した飲ンべぇ作、皿2種

 


拡大表示--> 

深見丈夫さん。
実に楽しそうにロクロを回す方だ。
「一生の趣味だね」


拡大表示--> 

左の白萩に水菜と揚げジャコのサラダ。
肴三種を盛った鉄赤。
我が子はかわいい。



Webmaster :
ammo@tokyo.fujifilm.co.jp
Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部