岩絵具でアブストラクトに出会いたい


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1997年2月掲載



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田さんに会う前に一つの仮説を立てていた。人間の視覚は、この世に産まれたときは物体が反射する、または放つ光線ををただの光を捉えているだけだけれど、成長していく過程で、その光を『林檎』だの『花瓶』だのとして認識する学習をしていくものである。抽象画、と言うのはその学習機能を一旦チャラにして、プリミティブな光として瞳から得た情報どおりに再現するものではないか?と。
 「ボクは違うなぁ」山田さんはメガネの奥の瞳をきらっとさせた。「もっと物をよく見る。例えば、満月だって、ただ空に丸がある、と見ていたけれど、それが空に本当にまん丸の物があるのがくっきり見えるようになった」スポーツマンの筋肉、音楽家の耳、画家の目、だったのである。


ヘリオ(46.5*14.4/cm)
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れにしても、なぜ日本画なんです?「え、あぁ、きれいだから」山田さんの答えは明快だ。岩絵具の粒子は西洋顔料と比較するとかなり粗い。それで描かれた絵は切ないくらい控えめに光を乱反射し、上品で落ち着いた感触を持っている。「子供の頃から絵を描くことで優越感を得るような、賞をもらったりしてね、そういう少年だったんです。で、ずっと絵を描いていた。それで高校生の時に東山魁夷の絵を直に見たらものすごくきれいだった。とにかく日本画の画材ってこれだけきれいだよ、っていうのをあの人は見せていて、で、日本画かぁ、と思った」確かに日本画材で描かれるざらざらマットな世界は西洋のツルツルぴかぴかのオイリーな世界とはだいぶ違った趣だ。


霧の中で葉は樹から剥離される
(194.0*130.3/cm)

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は、どうして抽象画?「ずっと普通のロマンティックな(笑)日本画を描いていて、周りの人にも、オマエもやっと絵が描けるようになってきたなぁ、とか言われて。でもそんなときに『ニュー・アカデミズム』に出会ってしまった」おっと、1960年生まれの山田さんは『ニュー・アカ』の人だったのか!熟語五連発くらいは必要か?「とにかく、例えば、バラの絵を描きますよね、そうすると見た人は、あぁ、バラの絵だ、と言うわけです。そこでそういうストーリーになってしまう。つまり作品を見る人間、と言うのが出現して、こちらにとってはただの絵でも、バラの絵、と言う限定されたストーリーとして見られてしまった。ちょっと違うな、と思った」山田さんは哲学入ってる。

 哲学、と聞くとエビのように腰が退けてしまうが、平たく言うと、地球というハードウェアの上に人間という、ものすごい数の、バグだらけのアプリケーションをおいておくためのシステム・プログラマーズ・ガイド、またはアプレットのコンパイラだ。そんなこんなでとりあえずコンフィギュレーションを書き換えちゃったプログレッシブ・ヤマダは具象表現をやめてしまった。「ジャズでいうところの“モード”になったみたいなもんで、あの出会いがなければ富士山描いてたかもしれない」と山田さんは笑うのだった




※岩絵具について

天然の岩絵具は岩石を砕いて粉状にした物で、その細かさで色が変わる。もちろん石によっても色が違う。人工色付き岩石を砕いた新岩絵具もあり、こちらは天然物に比べてかなり値段が安い。他に合成岩絵具もある。日本画ではさらに金箔など金属を加工した物、牡蛎の殻から作る胡粉、樹液を固めて作った藤黄なども使用する。



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---山田さんが講師を勤める全日制の学校---
早見芸術学園 造形研究所 日本画塾
神奈川県鎌倉市山ノ内705  tel:0467(46)2288(代)

---お取り扱い画廊---
アートギャラリー閑々居(Art gallery kan-kan kyo)
  東京都港区新橋1-8-4 丸忠ビル5階  tel:03-5568-7737


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マカロニ・アンモナイト編集部