アンモナイト針穴写真館
 『ピンホール夢幻』
(前編)

 文・写真/中山慶太(マカロニアンモナイト編集部)


--針穴写真の成り立ち--
 ピンホールカメラとは、その名の通り光学レンズの代わりに針穴を使用する写真機である。針穴といっても糸を通す穴じゃあなくて、“針先でつついたように小さい穴”の意味だ。その構造は一方の面にピンホール(とシャッター)、対向する面にフィルムや印画紙などの感光材料をセットした四角い箱を想像すると理解しやすいだろう。レンズの代わりになる針穴は、通常のレンズの絞りを極端に絞った状態に近いのだが、前玉も後玉もないのだから結像の仕組みは違う。多機能の集積が進んだ最新の一眼レフを見慣れた目には、これで写ること自体が不思議なほど単純なからくりだが、実は写真機の基本は四角い暗箱なのだ。
 一眼レフのレンズを外すと、シャッター膜の前に四角いミラーボックスがある。いっけん無駄な空間に見えるが、すなわちこれが暗箱、光学設計に組み込まれる重要な空間だ。カメラの進化の歴史はこの暗箱の周囲にさまざまな機能部品を付加する歴史であった。だが、レンズやファインダーも含めたそれら機能部品をいっさい取り去ってしまえば、カメラはふたたび始原の姿に立ち返るのである。
 もしも撮影中の暗箱の中のようすを知りたければ、映画館を想像していただきたい。暗闇の中、観客の頭上を走る光の束。その光線は背後の映写室の窓から差し込み、スクリーンに巨大な像を結ぶ。映像を投影するのは、空間のスケールから考えれば針の穴のように小さな映写機のレンズである。露光中の暗箱の中は、超小型の映画館が入っているようなものなのだ。

 <--index  <--Back  Next--> 

 

     
--->拡大表示  

作例1/神社の境内にて。ピンホール写真は独特の軟調描写に特徴がある。太古のレンズの絞り解放時の描写に近い。作例は超広角だが、四隅の像の流れを除けば絵には目立った崩れもなく、とてもレンズなしで撮った写真とは思えない写りだ。フォトラマFC-100C45、自作4×5ボディ+ピンホール、焦点距離75mm、絞りF250、露光時間6分。

 


--->拡大表示  

作例2/下町の流れ(その1)。長時間露出は風景を無人にし、水面を鏡に変えてしまう。今回は自作大型暗箱のテスト撮影で下町の運河や水路を歩きまわった。フォトラマFP-100C45、自作4×5ボディ+ピンホール、焦点距離150mm、絞りF500、露光時間4分。

 



Webmaster :
ammo@tokyo.fujifilm.co.jp
Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部