アンモナイト針穴写真館
 『ピンホール夢幻』
(前編)

 文・写真/中山慶太(マカロニアンモナイト編集部)


--大型暗箱を自作する(1)--
 さて、こうやって撮影をすすめていくと、35mmのフィルム1本を消化するのにかなりの時間(と手間)を要することがわかってくる。ならばいっそのことシートフィルムを使う大判カメラを使った方が1カットに集中しやすく、また画質の面でも有利ではないか。という安直な発想で大判フィルム用のカメラを自作することになった。
 大判カメラには営業写真館や広告カメラマンの御用達、というイメージがあるが、蛇腹を使ったアオリの操作を除けば扱いは難しくない。市販のカメラとしては暗箱にもっとも近い存在だ。基本的には内側を黒く塗った四角い箱をつくり、一方にピンホールを、その反対側に感光材料を置くだけで実用になる。
 箱の素材は何でも良い。軽くしたければ段ボールでも発泡スチロールでも良いし、クラシックカメラを愛好する方には、分厚い金属板を切削加工してボルトで組み立てた究極の金属写真機などいかがだろう。私の場合は体力を鑑みて、今回は木製ボディで4×5フォーマットの暗箱を設計することにした。
 最初に基本コンセプトを練る。とはいっても、設計の自由度はそれほど高くない。要は焦点距離を選ぶだけなのだ。使い慣れた35mmフォーマットのレンズから好きな焦点距離を選ぶと、私の場合は20mm、40mm、85mm、135mm、200mmである。この画角を4×5フォーマットに置き換えると、74mm、140mm、300mm、470mm、720mmとなる。フィールドでの実用性を考えれば、全長はせいぜい30センチ以下、できれば15センチ程度にとどめたい。それにピンホールの直径が一定なら、焦点距離が長くなるほど実効F値は大きくなって露出時間も長くなるし、レンズと違 って長焦点でボケを活かした撮影ができるわけでもない。いろいろ考えた結果、今回は75mmを基本に150mmを加えた二焦点とすることにした。これは35mmフォー マットでそれぞれ21mmと43mmに相当する。超広角と標準だが、絞り値とのバランスは良いセンだと思う。設計はボディを前後二分割構造とし、被写体に応じて焦点距離を使い分けると便利だろう、という軽い考えで着想した。
 渋谷の東急ハンズに3日間通いつめた結果、どうにか全体構想がまとまったのは締め切り1週間前。ところが各部に凝りすぎたため、組み立てには予想外の時間を取られてしまった。実は本稿執筆時点で、アンモオリジナル大型暗箱はまだテスト撮影用の未完成状態なのだ。というわけで、暗箱工作の詳細と本格的な実写結果は次号後編に掲載します。ご期待ください。

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組み立てを待つアンモ編オリジナル暗箱の構成パーツ。こちらは木製部品で、素材はチーク単板。

     

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オリジナル暗箱の構成パーツ、こちらは金属部品。缶ビールは愛飲銘柄です。

     
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作例5/下町の流れ(その4)。テスト撮影行も陽が傾き、露光タイ ムはとうとう10分に達した。
ここは千葉県浦安市の旧い運河で、その昔はアサリ漁で有名だった土地。周辺には故・山本周五郎が描いた下町の情緒が残る。手前の船がぶれているのは風で揺れているため。
フォトラマFP-100C45、自作4×5 ボディ+ピンホール、焦点距離150mm、 絞りF500、露光時間10分。



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