webマガジン「マカロニアンモナイト」
月刊特集
『レトロ人着写真館』前編

文・写真/中山慶太

1998年12月掲載

§前口上§

 仕事柄、プロラボと呼ばれる場所に出入りすることが多い。この頁の読者は先刻ご承知と思うが、念のために記せばこれはプロを対象とする現像所である。僕の場合はリバーサルの現像とかデュープとかを頼むのだけど、モノクロ専用のラボに行く機会も少なくない。写真趣味の究極はモノクロにあることはアタマでは理解しているのだが、自宅のスペースの関係もあって自家暗室には手を出せずにいるのだ。「ま、老後の愉しみに取っておこう」と、欲望に鍵をかけて何年にもなる。

 僕の行き付けのモノクロラボは東京の京橋にあって、この道一筋ン十年という老プリンターが手作業で焼いてくれる。先日、いつものように焼きの指定をしていると、ふと彼のつぶやきが耳に入った。

「最近の電子カメラ(デジカメのこと)は、現像も紙焼きもいらないんだって? もうこんな年寄りの時代じゃないねえ。カラープリントが機械で処理できるようになった時、私はお役御免だったんだ」

「昔はカラーも手焼きプリントしかなかったんですね」
「いやいや、私の若い頃は、映画のポスターだって白黒をカラーにしていたんだから」

「カラー写真を白黒から作る? それって、どうやるんですか」

「ああ、白黒のスチールを複写して色をつけるんだ。人着(じんちゃく=人工着色)とかイミテーションとか言ってね、どの印刷会社にもそれ専門の職人がいたもんだよ」

 モノクロからカラー。それはちょっと面白そうではないか。

 


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作例1 モノクロ写真はコントラストとグラデーションだけで構成され、
その両者は撮影とプリントの二度にわたって自在にコントロールできる。
印画紙の純白から漆黒までの豊かな階調は、電子映像では再現できない。
スキャニング後にコントラストカーブを調整しても、暗部の階調はどうしても潰れ気味になるのが残念。
180mmF2.8、絞りF3.5、1/60秒。ネオパン100プレスト。

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