『レトロ人着写真館』
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後編

 文・写真/中山慶太


§どんな写真素材を選ぶか§
  妙な言い方だけど、モノクロとしての完成度が高くない方が塗りやすい。つまりコントラストが低く、しかも全体の濃度が薄いもの。調子と明るさは紙焼きでどうにでもなるけど、シャドー部分には基本的に色が乗らないことを理解して素材を選ぼう。例えば、空のトーンなどは紙焼きですっ飛ばしてしまった方が表現の自由度は高いのだ。
 前述したように印画紙の選択は重要で、色鉛筆やパステルで着色する場合は必ず無光沢のものを使うこと。絵の具を使う場合、表面のコーティングはあった方が修正が楽で塗りやすい。コーティングの無い印画紙を使うと色が滲むし(表現手段としては面白いけど)、水を含んでくたくたになる。
 さて、いよいよ着色。難しい理屈は抜きに、どんどん塗っていこう。ポイントは色の薄い部分から塗っていくこと。水性色鉛筆を使うと、失敗しても水に塗らしたティッシュでふき取ることができる。ただし印画紙にはほんの少し色が残るので、この作業を何度も重ねると微妙な色調を出すことができる。
 やってみるとわかるけど、もとがモノクロだからどんなに色を重ねてもカラー写真と同じにはならない。グレーの濃淡が透けて色が濁るためだ。だから色調を忠実に表現しようとするより、人工着色ならではの雰囲気を大切にした方がいいと思う。ベースのグレーが色調を変えるために最初はなかなかうまくいかないけど、何枚か塗っているうちにコツが飲み込めてくる。
 作品が完成したら、フィキサチーフなどの定着スプレーを表面に吹いておく。特にパステルなどは顔料が擦れて落ちやすいので、何らかの保護手段を講じておくことをお勧めする。

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作例2 シャドー部分が多いプリントはこんな感じ。
大切なのは色のない部分に色を感じさせることだ。
作例では背景のハイライト部分に鉛筆のタッチを残してみた。肌色は濃いめに塗って何度もふき取り、微妙な色を出した。
和服の部分は黄色の水性顔料マーカーで下塗りし、上から水性色鉛筆で色を乗せている。(着彩=中山慶太)



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