「週休六日のススメ」
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 イラスト・写真・文/福山庸治

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つだったか、日曜日の午後、TVでミュージカル映画「雨に唄えば」をやっていた。
 もう何度観たことか。それでも、つい観てしまうのは、この映画が傑作中の傑作たる所以だろう。I'm singing in the rain〜と、どりゃぶりの雨の中で唄う、例の有名なシーンを観ながら、ジーン・ケリーはこの撮影で、ずぶ濡れの背広をいったい何着着替えたのだろう、などと思った。このシーンのダンスは、背広がまだ全く濡れていない時から始まるのだ。途中でカットが変わるが、その時点で、十分ずぶ濡れになってしまっている。失敗したら、また髪の毛を乾かし、乾いた服に着替えて撮り直しである。失敗は、何もジーン・ケリーの踊りと決まっているわけではない。傘だって雨だって水たまりだって、思わぬ“失敗”を犯さないとも限らないのだ。しかも、映画の雨は、フィルムにくっきりとその軌跡を刻まなければならないから、その量もハンパではない。おそらくパンツの中までぐっしょりになったであろう。
 それとも、名人ケリーは、本番にたった一回ずぶ濡れになっただけでOKを出したのだろうか?

 最近、ギターやらウクレレなどを弾いている自分(といっても、首から下のみ)をDVに収めたりしている。少しでも気の利いた演奏が録画できたら、ホームページに掲載してみようと思ってのことだが、それがいくら弾いても途中でヨレヨレになってしまう。これはと思える演奏が、ものの十秒と続かないのだ。何十年もギターを弾いてきたというのに、である。僕のギターのような10秒未満の名人ダンサーが、先述の雨中シーンを踊ることになったら、OKが出るまでに映画会社は傾き、本人は肺炎を起こして死んでしまうに違いない。そんなこんなを考えながらこのシーンを観ると、ますますもって名場面だなあと、感慨新たになるのであった。


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