* 週刊フォトエッセイ *

「週休六日のススメ」
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 イラスト・写真・文/福山庸治 --->Back Number

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転しない回転寿司屋が近所にある。
 といっても、ローラーが回転していないわけではない。一刻たりとも休まず、きちんとぐるぐる回っている。しかし、回っているのはローラーだけで、肝心の寿司が載っかっていないのである。いや、正確に言えば、1、2皿は回っている。だが、ただ回っているだけで、客の誰も手を付けようとはしない。なぜなら、その寿司、握られてから相当時間経っているであろうことが、一目でわかるからである。

 仮に、回っているものがアナゴだったとする。
 そして、いま自分が食べたいネタもアナゴだったとしよう。ものすごく気の弱い人だと、ローラーの上にアナゴがあるのに、「アナゴ」を注文すると、「アナゴなら回ってるよ」と返され、しぶしぶそのひからびたアナゴを手に取らざるを得なくなってしまう自分が哀れでみっともなく、つい、さほど食べたくもない「げそ」を注文してしまうかもしれない。もしかしたら、そんな取り越し苦労をした挙げ句、その日はアナゴにありつけないということもあり得る。

 だが、心配はご無用。
 この店では、普通の寿司屋同様、何の躊躇もなく「アナゴ」と口頭で直接注文すればいいのである。すると、店員が、親切に、ローラーの上のひからびたアナゴを取って、「はい、アナゴ」と出してくれる

 ……ようであれば、この店には二度入ることはなくなるが、決してそういうことはない。当然ながら、きちんと新しくアナゴを握ってくれる。それをプラスチックの皿の上に載せ、ここが肝心だが、ほんの一瞬だけ、ローラーの上に載せる。そう、この店では、この瞬間だけ、寿司が回転寿司になるのである。

 

−編集部よりお知らせ−
作者の福山庸治さんは独自のWebサイトを開設しています。アンモだけでは物足りないというあなた、摩訶不思議なヨジラワールドに是非アクセスしてみてください。画像・エッセイも充実。
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