* 週刊フォトエッセイ *

バーチャルワインバー
「天孔雀亭(amano‐kujaku‐tei)」
   『ヴェローナの秘宝、アマローネ #1』 

 文・写真/中山慶太 --->Back Number

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取材でワイナリーを訪問すると、テイスティングの恩恵に賜ることがままある。なかには自家または自社の製品をすべて試して欲しいという申し出もあって、ありがたい限り。だが、この数を一気に利くとなると口に入れたワインはすべて吐き出さなければならない(それ用の器は用意されている)。筆者のような貧乏性の人間には、ありがたいやらもったいないやら。けっきょく殆ど飲んでしまった。ヴェローナ北西のマァジ社にて。
取材協力=日欧商事株式会社

 


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『今週のワイン』

いまではポピュラーなアマローネだが、日本にその名を知らしめたのはこの銘柄ではなかろうか。シンプルな四文字のロゴが印象的な『マァジ』社、正式名称は Masi Agricola s.p.a.という。写真のボトルは同社を代表するアマローネ クラシコ。金色に刻印された文字は、マァジ社が主催する『プレミオ マァジ(マァジ アウォード)』を記念するもので、毎年ワイン業界に貢献した人物にアマローネの樽が贈呈されるという。まことに太っ腹な話で羨ましい限りだが、いちばん手前の1995年産はまだ日本の店頭で買える筈。15%のアルコール度数が示すように強烈なグリップを持つワインで、独特のビターな風味と濃縮したチェリーの果実味は他に得難いもの。

 

 

 



らっしゃいませ。今晩もたいそう冷えますね。お連れの方はだいぶ寒そうにしていらっしゃいますが、大丈夫ですか? こんな夜には、きっと本醸造の日本酒を熱燗にしていただくのがいちばんと存じますが、ざんねんながら当店にはそういう粋なお酒の備えはありません。
 そのかわり、と申しては造り手に申し訳ないのですが、とっておきのボトルを抜栓しましょう。世界でもっとも美しい名前を持つといわれるイタリアワイン、『アマローネ Amarone』です。
 さあ、どうぞ。グラスの向こう側が透けて見えないほど濃い色ですね。香りはいかがですか? すこし焦げた甘い木の香り、それも杉の木の香りがする。なるほど。
 なにぶんまだ栓を抜いたばかりですから、開くにはもうすこし時間がかかると思います。ええ、お客様がお帰りになるまでには、もっといろいろな香りが立ちのぼってくるはずです。
 それでは、アマローネについてお話ししましょう。産地は北イタリアのヴェネト州、有名なヴェネツィア市がある州です。この州はその昔、ヴェネツィア王国として栄えていたところです。中世には東方貿易でたいへん栄えた土地で、建築の内外装などにも『ヴェネツィア様式』という絢爛豪華なスタイルが今に伝えられています。また、ヴェネツィアグラスと呼ばれるガラス工芸も有名ですね。いえ、まあ個人的にはそのスタイルはあまりに華美で好みではないのですが。
 そのヴェネト州の州都は、ヴェネツィアの北西に位置するヴェローナという街です。イタリアの古都には珍しいことではないのですが、市の中心地には歴史的な建築物が保存された旧市街が遺り、四季を通じて観光客を集めています。なかでもローマ時代の円形劇場は、まあかなりくたびれて黒ずんではいますが、今でも健在です。夏にはオペラが開催されて……おや、どうなさいました。ははあ、ワインでむせたのですね。アルコールがすこし強いせいかもしれません。
 まあ、こんな寒い夜にはチーズをつまみに強いお酒もよろしいかと思いまして。ええ、普通の赤ワインのアルコール度数は12%から13%というところですね。ところが、アマローネは通常の品でも14%、ものによっては16%を超えることもあるのですから! ここまでアルコール度数が高まるのは、このワインが特殊な造り方をしているためです。それはマスプロダクションの合理性が優先される現代においてはひとつの驚異であり、ヴェローナの秘蹟とも呼べる製法なのですが。

 


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『今週のおすすめリンク』

左に紹介した『マァジ社』はヴェローナワインの伝統を護りながら、常に革新的なワイン造りに取り組む造り手として世界的に著名である。広報活動にも積極的で、技術面などを丁寧に解説したWebサイトはイタリアワイン好きには必見。ヴェローナの周辺地域は小規模な造り手が多く、従来はワイン造りの情報を得にくい部分があったのだが、こういうサイトを観るとインターネットの恩恵を実感する。日本からのアクセスは自動的に英語サイトに振り分けれられる(イタリア語版も観たい)。

http://www.masi.it/


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