* 週刊フォトエッセイ *

バーチャルワインバー
「天孔雀亭(amano‐kujaku‐tei)」
   『ヴェローナの秘宝、アマローネ #18』 

 文・写真/中山慶太 --->Back Number

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ヴァルポリチェッラの夕暮れ。アマローネ用の葡萄品種はコルヴィーナ、ロンディネッラ、モリナーラの三種類で、それぞれに適した立地の畑で栽培される。これはコルヴィーナの若樹の畑で、見慣れた柵造り。畝の間に入る轍や雑草の生え具合を観ると、所有者のポリシーがなんとなくわかる(手入れが悪いわけではない、為念)。

取材協力=日欧商事株式会社

 


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『今週のワイン』

今回の取材に協力していただいたマァジ社は、ヴェネト州の固有品種にこだわる造り手として知られる。同社がリリースする十数種の製品中、自社畑から造られるアマローネ等の高級品はこの6本入りの木箱で出荷される。これは数年前まで使われていた旧デザインのもの。写真の人物は右から社主のサンドロ・ボスカイーニ氏、愛娘のアレッサンドラ嬢、そしてインポーターのティエリー・コーヘン氏。

 

 

 

 



の日の午後はマッツァーノの畑で過ごしました。ヴァルポリチェッラの丘陵を貫く三本の谷の東端に位置する高台にはマァジ社の自社畑がひろがり、アマローネ用の葡萄が植えられています。ここで私は、同社の醸造チームを率いるセルジオ・ボスカイーニ氏から話を伺うことができました。
「この地方は伝統的なワイン造りで知られているけれど、我々は絶えず技術革新を進めています。ただ、イタリアの他の地方のやり方とはかなり違う。例えばマァジ社では外来品種は使いません」
 トスカーナの高級ワイン造りに欠かせないカベルネ種などには興味はないといいます。
「アリギエーリ伯の畑でソーヴィニヨン・ブランを観たのですか? ええ、確かにあれはフランス品種ですが、もう半世紀以上も前から伯爵の畑に植わっているのです」
 気さくなエノロゴ(醸造技術者)は、こちらの無遠慮な質問に気を害するそぶりも見せません。
「我々はヴェローナの佳い伝統を大切にしたい。カンポ・フィオリンで手間のかかるリパッソを復活させたのもそのためです。ただしその手法は単なるリバイバルではありません」
 彼らはリパッソという醸造法に改良を加え、最新の研究成果では発酵を終えたヴァルポリチェッラを(アマローネの澱ではなく)乾燥した葡萄そのものにコンタクトさせるメソッドを確立したのだそうです。
「アパッシメントを終えた葡萄にフレッシュなワインを接触させることで、色素やタンニン、芳香性の物質をさらに強力に引き出すことができます。重要なのは、これでヴィンテージの変化にも容易に対応できるということですね」

 セルジオ・ボスカイーニ氏とともにマッツァーノの高台に立ったとき、側にある畑の樹に収穫を免れた葡萄の房を見つけました。
「ヴェローナの伝統品種、コルヴィナ・ヴェロネーゼです。ちょっとフランスのシラーに似ている部分もありますね」彼はそう言ってそっと葡萄をつまむと、私に差し出しました。
「ほら、アマローネの香りがしますよ」
 半信半疑で口に含み、なかば乾燥した果皮を舌で押しつぶすと、確かにアマローネそのものの香りが……僅かなほろ苦さを含む、あの高貴な香りが口中に広がります。私が丸一日の滞在で見学した乾燥や醸造のプロセスは、実は畑の自然条件を再現するだけなのでしょうか。
 私の質問に、エノロゴは微笑んで答えました。
「アマローネは葡萄そのもの、ヴェローナの丘で風に吹かれる葡萄の風味を、そのまま閉じこめたワインなのですよ。必要なのは素晴らしく熟した葡萄と、乾いた風だけ。魔法は何もありません」
(この項終わり)

 


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イタリアのワイン評論でを代表する存在といえば『ガンベロロッソ』と『ヴェロネッリ』が有名だが、優れたジャーナリストはまだまだ多い。ローマ在住のルカ・マローニ氏もそのひとりで、彼の辛口のワイン評価は日本の料理雑誌でも紹介されている。そのWeb版『lm online』は洒落たデザインセンスが光る。トップページの英語リンクは繋がっていない(工事中?)みたいだけど、イタリア語の勉強のつもりでアクセスしてみてはいかがだろう。
http://www.lmonline.com/flash.html


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