*週刊フォトエッセイ*


バーチャルワインバー
「天孔雀亭(amano‐kujaku‐tei)」


『シチリアン・コネクション
 コルレオーネのワインを探して #1』

 文・写真/中山慶太--->Back Number


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メッシナ海峡を渡るフェリーの操舵室にて。窓にシチリアが迫る。

 

 


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東部シチリアでもっとも有名な観光地、タオルミナ。中心街のコルソ・ウンベルトはいつも人通りが絶えない。詳しくは来週。

 


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『今週のワイン』

シチリアに渡る前に南イタリアのワインを。プーリア州は長靴型のイタリア半島の、丁度ふくらはぎから踵にあたる地方だ。ここはイタリアでも最大級のワイン生産地帯なのだが、近年までその生産量の大半はバルクワイン(地域表示のないブレンド用ワイン)に回されるのが常だった。そんななか、踵の真ん中に位置するマンドゥリアには土着品種であるプリミティーヴォ種(カリフォルニア・ジンファンデルの祖先という)を駆使し、高品質なワインを生産する造り手が存在する。『ヴィニコラ サヴェーゼ Vinicola Savese』はその代表的造り手だが、現時点まで日本にはまったく輸入されていない。写真は『プリミティーヴォ・ディ・マンドゥリア Primitivo di Manduria』1990年。天然アルコール度数は実に16.5%という、強烈きわまりない赤ワインだが、土着的な香りのなかに高貴な揮発成分もとけ込んでいる不思議な酒。誰か輸入しないか。

『ゴッドファーザー』で一発あてた映画監督のフランシス・フォード・コッポラは、その儲けでゾエトロープという洒落た名前の撮影所を創り、あまったお金でワイナリーをはじめた。
 三部作をなす映画にはそこかしこにシチリアの風景が描かれ、スクリーンに映し出されたその風景でシチリアをイメージする方も多いのではないだろうか。
 映画に登場するマフィアの大立て者、ドン・コルレオーネは自分の出身地の村名を名乗ったという。
 故郷のシチリアで一家を惨殺され、米国に逃れたドン(ヴィトー)・コルレオーネを演じたのはマーロン・ブランド、若い頃はロバート・デ・ニーロだ。闇商売で成功したデニーロが復讐のためシチリアに戻ったとき、表向きの商売はオリーブオイルの貿易商だった。二十世紀前半の貧しいシチリアで、ワインはお金儲けのネタになりにくかったのかもしれない。

 イタリア系移民たるコッポラ家のルーツがどこにあるかは知らないけれど、彼がカリフォルニアでオリーブオイルならぬワイン造りをはじめたとき、まっさきに想いを馳せたのはシチリアの大地ではないだろうか。
 ……などと勝手な妄想に浸っていたら、イタリアの知人が面白い話を聞かせてくれた。いわく、映画に登場するコルレオーネ村は実在の土地で、そこに村名を冠したワインの造り手がいるという。
 まさかそれって、マフィアのワイン?
 脳天気な日本のワイン馬鹿は、こういう話にたいへん弱い。矢も楯もたまらず、旅支度をはじめる始末。というわけで今週から『シチリアン・コネクション』がスタートします。長い話になりそうだけど、是非おつきあいください。

 懇意の北イタリアの宿からレンタカーを飛ばすこと数十時間。イタリア半島の南端、メッシナ海峡に到着する。その昔、船乗りを恐れさせたという蜃気楼『ファタ・モルガーナ』はさいきん出没しないようで、列車あるいはクルマを運ぶフェリーもあっけなく対岸に到着する。
 そのフェリーの操舵室で、船長から話を聞いた。
「ここは狭い海峡だから、橋を架けることもできる。でもそれを望まないひとたちがいるのさ」
 それはつまり、港湾労働者を仕切る“組織”のことだと思い当たったとき、彼は真顔でこう言った。
「君はどこに行くのかね。コルレオーネ? ふむ。まあ、日本人なら危険はないだろう。……ワイン農家だって? たしか一軒だけあったような気がするが」

 


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Wine Link of This Week
-今週のワインリンク-
左に紹介したプーリア州のワイナリー『ヴィニコラ ディ サヴェーセ』だが、独自のWebサイトは存在しないようだ。その代わりに、この地区の中心的な都市タラントの商工会議所? Provincia di Taranto が周辺のワイナリーをまとめて紹介している。当該の頁にアクセスしてみたら、不思議なことに写真のワインの説明がない。果たしてその理由は? たぶん優良年の限定生産品ではないかと踏んでいるのだが、真偽のほどは不明である。ご存知の方がいらっしゃったら、是非お教え願いたい。
http://www.provincia.ta.it/
cartadeivini/cantine/pichierri.htm


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