*週刊フォトエッセイ*


バーチャルワインバー
「天孔雀亭(amano‐kujaku‐tei)」


『シチリアン・コネクション
 コルレオーネのワインを探して #2』

 文・写真/中山慶太--->Back Number


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イタリアでも有数の景勝地、タオルミナのギリシャ劇場。遠くにエトナ山を見渡す遺跡は保存状態も良く、真夏には野外オペラ劇場として賑わう。

 

 


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タオルミナには著名なホテルが多いが、筆者は少し離れた海辺の街ジャルディーニ・ナクソスに宿を取った。『ホテル・アラテナ・ロックス』はプライヴェートビーチを持つ優雅なリゾートで、アラブ風の意匠を持つ内装も絶品。

 


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『今週のワイン』

シチリアは古来からイタリア最大のワイン生産地でありながら、“質より量”が追求され続けてきた。近年の経済発展でモダンなワイン造りの技術が導入され、各地に新進気鋭の生産者が現れているのは嬉しい限り。シチリア中北部のカステルブオノ(かつて有名な公道レース『タルガ・フロリオ』が開催されたあたり)に本拠を置く『サンタ・アナスタシア Santa Anastasia』も 90年代に彗星のごとく登場したワイナリーで、DOC指定のまったくない地域で高品質ワインを創りだしている。写真は同社の旗艦たる『リトラ Litra』97年。国際品種のカベルネ・ソーヴィニヨンと土着品種のネロ・ダヴォラを混醸した赤ワインで、ファーストヴィンテージである96年と続けて『ガンベロ・ロッソ』の3グラスを獲得して注目を浴びた。内省的な香り、ドライでタニックな酒躯は、はて、どこかで、と思ったらエノロゴ(醸造技術者)にかのサッシカイアを生みの親、ジャコモ・タキスを起用していた由。98年からはやはり売れっ子エノロゴのリッカルド・コタレッラに交代したので、恐らく彼好みの柔らかいワインになっているはずだ。

ッシナ海峡に面したメッシナの街から高速で南に下る。最初の目的地は海辺の景勝地、タオルミナである。
 ここはいぜんにも訪れたことがある。あのときは映画『グラン・ブルー』のロケ地を探してやって来たのだった。
 シチリアというと、なぜか映画がらみの旅になるのはどうしてだ。などとつぶやきながら、中心街のコルソ・ウンベルトで観光客をかき分け、酒屋を探す。なにしろお金持ちのリゾートだから、優雅な暮らしの小道具はなんでも揃うのだ。
「コルレオーネ村のワイン? そんなもの置いてないわ。それよりこっちの『レガレアーリ』はいかが」小綺麗なエノテカ(ワインショップ)の女主人は、妙な東洋人のリクエストを軽くいながし、そつなくシチリアの有名ブランドを勧めてくる。
 確かにレガレアーリ、すなわち『タスカ・ダルメリータ侯爵家』のワインは、シチリアでもっとも名のしれたブランドだろう。だが残念ながら? 日本にも少量が輸入されており、べつだんここまで来て購うものでもない。左脳はそうささやいているのだが、右脳は(逆だっけ)「安いから買ってしまえ、ホテルで飲めるぞ」などとささやく。
「ロッソ・デル・コンテ(レガレアーリの最上級品)はありませんか」
「あら残念。あれはちょうどオフヴィンテージなので、今年は欠番。なんだったら、ガイアのバルバレスコもあるけど」
 おやおや。イタリア最南端のシチリアまで来て、北イタリアのワインを勧められるとは。

「あら、コッポラの映画を観て来たの? 確かに『ゴッドファーザー3』ではタオルミナの駅でロケをやってたけど。コッポラのワインより、シチリアのワインの方が美味しいにきまってるわよ」
 ついさきほどピエモンテのワインを勧めたその舌の根が乾かぬうちに、熱烈郷土愛のひとに変身する彼女を責めてはいけない。シチリア人は皆、本当にシチリアのワインが最高だと思っている節がある。ガイアやサッシカイアを品揃えしているのは、たぶんここが暇なお金持ちの流れ着く波止場だからなのだ。
 けっきょく、レガレアーリの白『ノッツェ・ドーロ』を買って店を出る。オーナー夫妻の金婚式の写真をラベルに戴くそのボトルは、シチリア土着品種の白葡萄、インツォリアを主体に醸した名品である。
 ホテルの部屋で、冷房と濡れタオルで冷やしたワインを飲みながら、この先の旅を思いやる。
 コルレオーネ村のワインは、いったいどんな香りがするのだろう。


 


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Wine Link of This Week
-今週のワインリンク-
先週に引き続き、『今週のワイン』の造り手のサイトである。『サンタ・アナスタシア』は創設間もない新興ワイナリーで、おそらく若手の資産家が運営しているのだろう。著名なエノロゴを起用するだけでなく、Webサイトによる広報活動にも積極的だ。特に個々のワインのスペックは注目に値する。本来ならあまりオープンにしたがらないデータ(葡萄の樹齢など)がきちんと掲載されているのだ。こういう造り手が増えるのは歓迎すべき傾向なのだが、ワインにミステリアスな部分を求める筆者などはちょっと複雑な心境でもある。英語あり。
http://www.abbaziasantanastasia.it/e_vini.htm


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