* 週刊フォトエッセイ*

「週休六日のススメ」

 イラスト・写真・文/福山庸治--->Back Number


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106 左利きのBlues弾き

 は、またオックスフォードの町に戻る。

 それぞれの業種の店が、ほぼ一軒ずつあるアメリカ南部の町オックスフォード。その一軒ある小さな楽器屋を覗いたら、ひとりの若い白人男性が、売り物のギターで、Bluesを弾いている。左利きで、普通に弦を張った右利き用のギターを、逆手に持っての演奏である。あのジミヘン(※)と同じ弾き方だ(松崎しげるもそうか?)。この弦を右利き用に張ったままの左右逆向き奏法だと、右利きには簡単なコードも、不自然で無理のある指の配置になってしまうので、すごく難しいんじゃなかろうかと思うのだが、ジミヘンも彼も楽々と弾いている。最初にそうやって覚えれば、どうということもないのだろう。それにしても、奇妙な感覚、不思議な指遣いである。

 その指遣いを見ていたら、僕の世代くらいまでの子供たちが、鉄の塊とも言える、大きくて重たい大人用の自転車を、三角乗りと称する曲芸的な乗り方で、巧みに操っていたことを思い出した。当時、子供用の自転車は高価で、よほどのお坊ちゃんでないと買ってなどもらえなかったから、ペダルに足が届かない子供たちは、そういう変速的な形で自転車に乗ることを覚えたのだ。
 もっとも、そのまだ十分に若い彼が、左利き用のギターを買ってもらえないほど家が貧しかったとは考えにくい。おそらく、最初に出会ったギターが、自宅か友達の家にある普通の右利き用ギターで、それを三角乗りのように弾き覚えたんだろう。

 その左利きのBlues弾きが、その日の夜、町に一軒あるライヴハウス(写真)で演奏するから是非聴きに来いという。行ってみると、彼は正札の付いた生ギターではなく、やはり右利き用のストラトキャスターを逆さに持ち、アンプのヴォリュームいっぱい、ギンギンに響かせながら、ドラムとベースをバックに、ヴォーカルをもこなしていた。往年のオールマン・ブラザース・バンドを彷彿とさせるサウンドで、なかなかの腕前であった。


(※)ジミー・ヘンドリックス:いわずと知れた伝説のロックミュージシャン





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