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* 週刊フォトエッセイ*

「週休六日のススメ」

 イラスト・写真・文/福山庸治--->Back Number


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110 バナナが高級だった世代

「バナナは昔は高級品だったんだよ」

 と言って、たちまち歳がバレたのはだいぶ昔。
 極端な分類をすれば、ある時期日本人には、バナナ高級期以前と以降の二種類しかいなかった。その頃、高級期以降の人は、「バナナは昔−−」と口にする高級期以前の人をなんとなく冷笑したものである。なぜそうなのかはわからないが、あるいはこの「バナナは昔−−」という懐古的で少し説教じみたフレーズに、以降世代はオヤジ臭さを感じたのかもしれない。

 それが現在だと、「バナナが高級品だったことを知っている人が、ある年代から上の人である」ということを知っている世代自体が、次の世代に押し上げられて上に繰り上がり、拡散して全体の中の一部となって薄まったため、うっかり「バナナは昔−−」と口を滑らしても、単にそれは体験的な知識として受け止められるだけで、隣接する世代間ギャップに起因する冷笑の確率は、かなり低くなったように思っているが、そう思うのは、僕の単なる思い過ごしかもしれない。

「言うこときかないと、サーカス団に売るよ」

 と脅かされて育ったのも、やはりこれより以上の世代であろうか。
 昔の親の躾の中には、こういうとんでもないものがあった。サーカス団がいい迷惑である。そうやって叱られた子供は、かつて雑誌の挿絵で見たような、鞭でおどかされながら、玉乗りの練習をさせられる薄幸な自分を思い浮かべて泣いたものだ。

 という話をすると、今や生きた化石と思われるかもしれない。





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