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* 週刊フォトエッセイ*

「週休六日のススメ」

 イラスト・写真・文/福山庸治--->Back Number


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111 くだらなさも、また楽し

 最近は、より通俗的で大衆的な舞台や演し物を観る機会が多い。

 ボリショイ・サーカスもその一つだが、そのひと月ほど前には、「トロカデロ・デ・モンテカルロ・バレエ団」の公演を観た。例のむくつけき男たちが、脇毛も剃らずチュチュを着て、女踊りをするというキワモノ芸だ。彼らは確かなバレエ技術を持った集団だが、発想のルーツにあるのは、宴会芸といっていいだろう。
 普通に女性が踊ればいいところを、わざわざ男が踊るのだから、当然プラスαとしてのエンターテインメント色が強化される。それがますますキワモノ性を押し出す。たとえば、サンサーンスの曲の振り付けで有名な「瀕死の白鳥」だと、次々に登場する骨折してギブスをはめたような白鳥たちから、羽根がまるで豪雪地帯の雪のようにバッサバッサ落ちるといった具合に、パロディとしての笑いを誘う。

 そういうのを観ながら、僕が大笑いする。
 つれあいの観察によると、仕掛けが単純なほど笑うらしい。

 映画「アマデウス」に、シカネーダー率いる大衆歌劇団による、「ドン・ジョヴァンニ」などのパロディがふんだんに散りばめられた演し物のシーンがある。内容はかなり下品で行儀が悪い。安ピカそのものである。それを、死の陰が迫ったモーツァルトが無邪気に笑い愉しんでいる。あの映画の中で、僕が最も好きな、妙にホッとさせられるシーンである。トロカデロはもっとソフィスティケートされたものだが、その楽しさは、いわばああいった演し物と同質のものであろう。マンガ家という属性に似合わず、マジメで高邁なものを僕は基本フィールドにしているが、あれはあれで、実にくだらなくて楽しいのだ。





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