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STUNT MAN with Flying Harnesses (rear view)



* 週刊フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

 写真・文/根岸 泉--->Back Number



 


Roll 12 人吊り その1 Flying Harnesses

 「人吊り」は操演のお仕事の重要な一分野である、特に「特撮」ではなく「本編」(役者さんがお芝居する)で我々の出番がある場合そのかなりの割合を占めると言っていいだろう。

 一口に「吊り」といっても目的はいろいろある、スーパーマンのように自力で空を飛ぶ場合、爆発で(あるいは蹴られて?)吹っ飛ぶ場合、高いところにぶらさがる役者を安全策として吊る場合、そしてけっこう需要があるのが「首吊り」(!)

 いずれの場合にも役者さんに「吊りベルト」を装着する、ロッククライミングやスカイダイビングにもハーネスというものがある、人間を安全に吊り下げることが出来る道具であるのは同様だ。しかしそれらになく操演用吊りベルトにだけ要求される要素がある、それは「バレないこと」だ。

 クライミング/スカイダイビング用のハーネスは衣服の上に付け隠す必要などない(あたりまえだ)考慮すべきことはともかく「安全」であり、使い勝手がいいとか、軽いとかが下位にくる、ところが吊りベルトの場合「安全」が最上位であるのは言うまでもないが、同率2位に「つけていることがバレてはいけない」という要素がくる。

 吊りベルトは衣装の下につける、当然のこととして衣装の生地は厚くて余裕があったほうがバレにくい、しかしただ見えなければいいというものでもない、つけた途端に役者がデブになってもいけないし、衣装のシルエットが変わってもいけない、従って体型に合わせたタイトなものが要求される。

 そのため吊りベルトは用途に応じた各種のタイプが各種サイズ取りそろえられている、それらは汎用品だが普通に服を着ている状態であれば(それが背広であってもセーターでも和服でも)充分に対応できる。

 これが薄着になっていくとだんだんシビアになって行く、しまいにはオーダーメイドということになる、すこしでも体の線と合っていないところがあると、シルエットに影響し、あるいはシワになってバレてくるからだ。

 時に水着の女の子を吊ることもある、こういうときは体を石膏で型取りして強化プラスチックの「吊り型」を作ることになる、これは第2の皮膚のようなものでシルエットは変わらない、シワも出ない、というか動かない(しかしこうなるともはや「ベルト」ではない)これは専用品で他の誰にも転用出来ない(だから仕事が終わると記念にあげちゃったりする)本人でも太れば使えなくなるだろう。

 吊りを使ったワイヤーアクションは香港が本場で我々は足下にも及ばない(その差を埋められない理由があるのだが長くなるのでここでは書かない、いずれ書く機会もあるだろう)
 その一方「バレない吊りベルト」の研究に関してはこちらに一日の長がある、なぜなら我々(というのは私の所属する操演会社のことだが)は「ウルトラマン」の操演を一手に引き受けているからだ。

 なぜウルトラマンをやっていると吊りベルトの研究が進むのかと言えば、ウルトラマンがウエットスーツで出来ているからだ、なぜウエットスーツだと研究が進むのかについては長くなるのでまた来週ということになる。(続く)


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