「勝見洋一の道楽三昧 第一回」
最近、中国に行きましたか
    --その2--

て、そんな料理人の香港料理を北京で食べる。
 たしかに旨い。
 しかし、これならわざわざ北京で食べることもない、香港に行って食べればいいじゃないかと思うが、ところが今の香港の一流店のシェフはほとんどが出稼ぎ中。
 だから、とうぜん、正直言って香港は軒並みまずくなった。料理から薫る何かが消えつつある感じだ。香港料理を食べたければ、北京か上海に、ということになるのか。
 香港料理のもとは広東料理だ。そこに潮州地方の海鮮料理の流れや、もっと南のベトナムやタイなどの影響も混じっている。
 そんな香港料理を北京で食べても、おいしいとは思うが、実を言うと、ひと味ふた味たりない。
 理由にはいくつもある。
 材料が香港と同じでない。気候が違う。言葉が違う。

 それよりも北京では香港のあの海の匂いがしない。真冬には空気よりも海水の方が暖かいものだから、海は猛烈なガスを発生する。霧の一種だが、霧よりももっと水蒸気を感じさせる。なにしろ海からモウモウと白い煙がたちのぼるのだ。
 その白い湯気に港の重油や機械油の臭い、街中の腐敗臭、それから言いにくいことだが貧乏の臭い。人間が、金がないとうめく感情の臭いだ。

<--Back   ... To be continued. 

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 Text :
Yoichi Katsumi
 Photo :
Yoichi Katsumi


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マカロニ・アンモナイト編集部