●クリヤ・マコト
ミュージシャンたちの肖像
        --その5--


 ・ウェストバージニア州立大学
  コミュニティーホール
  「エリクソン・アルムニ・センター」

連の取り巻きの中に、抜きんでて男ぶりのいいジムというやつがいた。彼は(他のヒッピー達と同様)髪と口ひげを長くのばし、背中に髑髏マークのついた皮ジャンを着て、見事な体躯にタトゥーを入れている。おそらくウッドストック時代のヘルスエンジェルスの一群に属するのだろうが、ハーレーではなく真っ赤なカウンタックに乗っていた。強面だが話をしてみるととても優しい奴で、彼と仲良くなったぼくは例のフォルクスワーゲンよりも快適なカウンタックに乗せてもらうことが多くなった。親しくなると彼が「デッドヘッド」の一員であることがわかった。デッドヘッドとはグレートフル・デッドの熱狂的な支持者たちのことで、髑髏をトレード・マークにし ているためこの名がついた。熱狂的なファンであり、いわゆる「追っかけ」である。 ジムはなんと、普段はグレートフル・デッドの追っかけをして過ごし、グレートフル・デッドのツアーがない期間はそのコピー・バンド「スモークスタック・ライトニング」の追っかけをしていたのである。

 ある日情報通のジムから、「ピッツバーグでグレートフル・デッドのライブがある」という第一報が入った。ぼくたちはモーガンタウンから車で2時間ほどの、最寄りの都市ピッツバーグに大挙して出かけた。ぼくは本家本元のライブを見るのは初めてだったので大いに期待を膨らませていた。ついに会場が暗転し演奏が始まった。その途端どこからともなくモクモクと白煙が立ちこめてきた。白煙はあちこちからランダムに立ちのぼり、見る見るうちに渋谷公会堂ほどの広さの客席を覆い尽くしていった。満場の客たちがいっせいにマリファナを吸い始めたのである。ある意味でとても単調なこの音楽は、マリファナでハイになった状態で聴く音楽だったのである。ぼくは初めて気づいたこの事実に愕然とし、空しく点灯する「No Smoking」のサインを見つめていた。さらに印象的だったのは、本家本元よりもスモークスタック・ライトニングの演奏の方が上手かったことである。

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 Text :
Makoto Kuriya
 Photo :
Makoto Kuriya


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マカロニ・アンモナイト編集部