「東京恋愛事情 第二回」
 甘くてすっぱくてカライ
 恋について

     --その3--

頃の都内、及びその近郊で暮らしていると、いまさらいちいち「あ、ガイジン」と振り返ることはほとんどなくなる。外国人と知り合わずに生活する方がかえって難しいくらいである。アパートにも会社にも当たり前に外国人達がいる。そんな東京で国際結婚を珍しがるのはもう古い世代に属してる証拠かもしれない。
 プーシットさんは今でこそ話していて外国人であると意識させられるところのない普通の日本語を話すが、最初はどうだったのだろう。「ぷーちゃん(プーシットさん)は日本の高校出てるし、会ったときから日本語は上手だったんですけど、あるとき喧嘩してて“ぜったい許さんぞ!”って言ったことがあるんです。その“ぞ”がおかしくて笑っちゃって喧嘩が終わたことがあった。ネ、」と二人は目と目を合わせて微笑んだ。どうやら漫画を読んでいて習得した日本語らしい。
 喧嘩、するんですか?「前、狭いアパートに住んでいたとき、彼女が怒って部屋に入れてくれなくなって、台所で寝たこともあります」いそよさんは見かけに寄らず、結構怖い。それでも日本の巷に流布されているタイ人女性像と比較すると、日本人女性の方がまだ控えめだ。

 最近、東京の一部で外食として定着した感のあるタイ料理の特徴の一つは、甘い、酸っぱい、辛い、など全ての味覚が一つの皿に濃厚に詰め込まれているところにあるのだが、タイ人女性の喜怒哀楽はまさにそのタイ料理の一皿そのもので、殺されるかと思うほど怒っていたかと思うと、次の瞬間、男にとっては感涙モノの情の深さを見せたりする、のだそうだ。それが女本来の姿だ、と言われればそれまでだが、日本の男にとってそういう女性は、思わず惚れてしまうほど怖ろしい。
 タイには『タマリンド』という果物がある。しょっぱさを抜いた梅干のような実が鞘の中に詰まった巨大な茶色い枝豆のような形の、一口食べたらやめられないけど食べ過ぎると必ず下痢を起こす木ノ実だ。最近タイの街のそこかしこで激増中のコンビニエンス・ストアに行くとサフラン色のパッケージに包まれた『タマリンド・キャンディ』を売っているのだが、そのキャンディは甘い。そして酸っぱい。ここまでは普通のお菓子なのだが、なんと、しかもぴりりと辛いのである。タイのタイたる所以だ。タイ料理の強烈な一皿と比べれば日本の女性はこのタマリンド・キャンディの一口のようなものなのだろうか。

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 Text :
Tomoko Kono
 Photo : K.Nakayama


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マカロニ・アンモナイト編集部