「フィルムの中の印画紙」
  --Chapter1--

File-2 LE GRAND BLUE(1982)
藍に染まった
 ポートレートの行方。

西欧の男性には、家族の写真を肌身離さず持ち歩くひとが多い。それを財布やら手帳やらに忍ばせておいて、出張などで家族と離れたときにそっと取りだし、矯めつ眇めつ眺めて涙ぐむ。さらには、機会あるごとに他人に見せる。たとえばあなたがイタリアを旅していて、車中やホテルのサロンでぼうっとしていようものなら、写真おじさんに話しかけられる確率は、荷物がなくなる確率と同じくらいに高いはずだ。

   

 こういうシーンはたびたび映画に描かれている。最近では、やはりイタリアの俊英ジュセッペ・トルナトーレ監督作品『みんな元気』(Stanno Tutti Bene:1990年)にシチリア車中の写真おじさんが登場した。もっとも、家族の絆の崩壊をテーマとしたこの作品では、名優マルチェロ・マストロヤンニ(惜しくも先日他界した。合掌)扮するおじさんは周りのひとに相手にされていなかったが。厚情を以て鳴らす南イタリアも、昨今はせちがらくなってきたのだろうか。
 ともあれ、やはり大切なひとの写真を見せられるとつい和んでしまうのは、相手が自分に気を許した証しだと思うからだろう。この手は初対面の女性との会話のきっかけをつかむのに良いかもしれない。でも、女性にしてみれば和めないときもある。たとえば、印画紙に写った家族がイルカだった場合だ。


... To be continued.

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Text : K.Nakayama
Photo : rung

Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部