勝見洋一の贅沢三昧 第三回
「在る掘り出し物の顛末」
          -その3-

 文・写真/勝見洋一

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の茶碗がどんな茶碗かは聞きのがしたが、彼のような経験ある美術商でも心臓が高鳴り、頭の芯が熱くなって血圧の上昇が感じられたほどであったという。
 むろん、安かった。タダみたいな値段である。掘り出し物である。これを日本で売れば旅費や滞在費はおろか、数年分の生活費がまかなえるだろう。パリの滞在中、彼は茶碗を眺めては頬の下をふくらませた。

 

 精神面での金銭の余裕ができて、彼は以前から泊まってみたいと思っていた高級ホテルに引っ越した。そのルイ王朝風の豪華な部屋の姿見に、若い頃のお洒落心が蘇って買い求めた服に身を包んだ自分を写しては新しいタイを絞め、いそいそとレストランに通い、今までは躊躇していたワインの銘酒を注文した。そんな超高級レストランはいつも満員で断られることが多いものだが、高級ホテルのフロントマンに電話をしてもらえば簡単に席が取れることを彼は始めて知った。

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