クリヤ・マコト ミュージシャンたちの肖像-3
炎のサックス奏者ネイサン
-その6-

 文・写真/クリヤ・マコト

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 それにしても、かつてジャズやR&Bを一緒に演奏していた仲間が何年もの間離れて暮らしていたのに、久々に再会して話してみると好きなラッパーまで一致してしまうという事実にぼくは感銘を受けた。ごく近くで一緒に音楽をやっている人でさえ、なかなかそこまで通じ合うということは難しいのに。だからぼくにとっては、ケヴィンが一公務員で、無名のアマチュア・ミュージシャンにすぎないことなど問題ではないのだ。彼が聞かせてくれたデモ・テープは実に彼らしい代物で、ジャジーなヴォーカル入りのRR&Bだった。女性シンガーがなかなか素晴らしいのだが、聞けば彼女はフィリー(フィラデルフィア)でスーパーの店員をしているそうだ。
 しかし馬鹿にしてはいけない。アメリカという国はスーパーの店員が、次の日いきなり大スターになってしまう所なのだから。実際ぼくのデビュー・アルバムに入っているサックス奏者のクレッグは、アルバイトをしながら演奏をするプータロー・ミュージシャンだったが、今ではエドウィン・マッケイン・バンドの一員としてアトランティック・レコードと契約し、毎日のようにMTVでオンエアされるスターになってしまった。ケヴィンの話によれば、現在フィリーには「全てがある」のだそうだ。多くのドラマー、ベーシスト、ヴォーカリスト、ラッパー、DJ、とにかく才能にあふれ返っているという。次回来日したときには一緒にフィリーに行こうと約束した。

 


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・ネイサン・デイヴィス氏
 彼の自宅にて

 

 2時間ほど話した後彼は仕事に出かけ、夜再開することを約束した。その夜ホテルで待っているとケヴィンから電話が入り、仕事の帰りにたまたま知人にバーに引っ張っていかれ、ちょっとのつもりがさる女性と意気投合してしまい、今夜はその女性と南部に旅立つことになったいう(一夜を過ごすという意味)。4年ぶりに合った16年越しの親友よりも、その日ナンパした女性の方が優先されるという恐れ入った話である。おかげでぼくは翌日の晩、彼につきあって徹夜する羽目になった。
 さて、帰国の前日は再びピッツバーグへ向かった。ぼくがピッツバーグ大学でジャズの歴史を教えていた頃の上司で、ピッツバーグ大学の名誉教授でもあるネイサン・デイヴィス氏の家に招待されていたためだ。彼はケニー・クラークやデイブ・ブルーベックと同世代のジャズメンで、途中から教育の道に入ったためミュージシャンとしての名声は他の人々に及ばないが実力的には申し分ないテナー・サックス・プレイヤーだ。ヨーロッパやアメリカでは偉大なジャズメンとして尊敬を集めており、特にペンシルヴァニア州での文化的な貢献度は非常に評価されている。彼はもちろん様々なレコーディングをこなしているが、最近は若いラッパーとも共演したそうだ。

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