マダム・キヨコの近代処世術 第2回
「イタリア式恋愛術を学ぶ」 -4-

文/印南紀世子メニヤン  写真/Eric Meignien

* 週刊フォトエッセイ*   






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その二人の人物のあとを追う間もなく、土曜日の人混みを分けて、今度は貴族 か富裕市民の装束なのか、ヴィロードに金モールで飾りをつけた豪華な装いの一団が登場した。それぞれ男性が女性の手を取って、威風辺りを払う貫禄である。ちょっと一服、というわけか、彼らは戸外に椅子とテーブルとを並べたカフェのテラスの隅に席を占めた。カフェの客たちも歩行者たちも、珍しそうに眺めてはほほえんでいる。

 こんな日は写真公認に決まっているから、夫にカメラの用意をさせ、ほら奇麗なお姉さんのそばへいってごらんなさい、と子供たちをそそのかすのだが、うちのチビどもは内気なのである。子供と一緒はあきらめ、綺麗なお姉さん、お兄さんたちだけをフィルムに収めた。

 シャンベリーの旧市街には石畳の舗道が続く。『金の十字架通り』から大聖堂前の広場を通り、サン・レジェ広場へと向かう。街角には、ハチミツ、チーズ、パン、木彫り細工など、中世以来の伝統を持つ産物の露店が出て、売っているのは中世装束の商人たちだ。その間を縫って、これも中世装束の市民たちが三々五々とそぞろ歩く。町自体が正真正銘、13世紀や14世紀の建築なのだから、雰囲気は満杯である。中世の音楽にのって踊る一団などもいるが、馬上の騎士を子供たちに見せようと近付くと、馬の至近距離にいた歩行者の一人が飛びのいた。馬の放尿だ。馬の背後には点々と残る糞便も見える。かの時代に公共の清掃事業が完備していたとは思えず、想像するに中世の香が漂うのである。

1997年8月掲載



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「イタリア式恋愛術を学ぶ」

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マカロニ・アンモナイト編集部