マダム・キヨコの近代処世術 第3回
「戦士の休日、労働者の祝日」  -1-

 文・写真/印南紀世子メニヤン 

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先の買い物は荷物になるのでためらうことが多いが、あとになって手に入れなかったことを後悔することもある。

 昨年の暮れ、厳寒のアルザスで『36年の夏、アルザス』という本を見かけた。若い男女の一組が自転車から下りて野に立ち、空を見上げている、という場面の白黒写真が表紙になっていた。去年の十二月といえば、冬は寒いのがあたり前のアルザスですら寒波が新聞種になったくらいの冷え込みようだったから、中に入って暖をとるためだけにでも本屋の扉を押す理由はあったのに、凍えた余りそんな知恵も麻痺していたのだ。旅人の私は予想外の寒さにひたすら面喰らい、物乞いのジプシ−女よろしくスカ−フで頭をくるんだまま、再び同じ本をショ−ウインドウの中に見かけたときにも素通りを繰り返した。もう一度縁があってあの本を見かけたら、今度はためらわずに手に取るだろうが、そういうときが来るかどうかはわからない。


... To be continued.  

 


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