新・東京恋愛事情
「boyの写真-2」  -1-

 文/中山慶太 写真提供・取材協力/boy

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れは、街を歩く娘たちの首から、銀色の写真機が消えた日のことだ。
 ショーウインドーも街路樹もいつもと変わらなかったけれど、僕には横断歩道の端にたたずむ少女の瞳の色が昨日までとすこし違っているように思えた。
「なにを見ているの?」という僕の質問に、
「今日の街をみてるの」
 少女はぽつりと答えた。
「昨日の街と違うようにみえる?」
「うん。ぜんぜん違うよ、昨日はあそこの塀に落書きがあったもの」
 少女の視線を追うと、道の反対側には新しく塗り直された金属の塀が並んでいる。
「好きだったんだけどな、あの落書きの色」
「写真は撮った?」
「ううん、撮らなかった。落書きは好きだったけど、あの塀は好きじゃない」
 その塀は往来の視線をさえぎる役目をちゃんと果たしているけど、向こう側の風景はみんなが知っている。そこではこの街に旧くからあった共同住宅が壊され、新しい街づくりが進んでいるのだ。
 工事現場を覆う塀の上からのぞくのは、土台を固めるパイル打ち込み用のクレーンだけ。ぽっかりと開いた空間からは、あの住宅街の香り、街に息づいていた樹木の発する、ひそやかなオゾンの匂いが漂ってこない。
「塀の向こうにあった樹、ぜんぶ切られちゃったのかな」
 僕のつぶやきに応えるように、少女は背中のかばんを下ろして小さなアルバムを取りだし、ぺらぺらとめくりはじめた。その頁には塀の向こうの街で撮ったスナップ写真がいっぱい差し込まれている。


... To be continued.  

 


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