南イタリアシリーズ第2弾
「ナポリで歌ってソレントで食べて」
  -7.女心の歌(風の中の羽のように) 2-

文・写真/河野朝子

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焼きトウモロコシの屋台。
この写真、左奥で私は転けました。


ポリの港付近を女二人で歩いていたときのことだ。視線の向こうの交差点では警官によって車が止められ、免許証の提示が求められてたりしている。「なにしてるんだろうなぁ」なんて考えながら歩いていた私は、地面の石畳と同色の細い鉄の輪がそこに落ちていたのに気づかず、両足をとられて前方に思いっきりのめって転んだ。しばらく起きあがれないくらい両膝を強打し擦りむいてしまったのだ。
 と、次の瞬間、前方から二人の男性が駆け寄ってきた。先ほどの取り締まりの警官と取り締まられていたドライヴァーである。「シニョーラ、大丈夫ですか?ケガはありませんか?」「病院に行きますか?」などと声をかけられ二人に両脇をかかえられ私はようやく立ち上がることができた。骨などに異常はなさそうだし、田舎でコロコロ転びながら育ってきた私はこれくらいなら歩くことはできる。「大丈夫です、本当に。どうもありがとうございます」と礼を言うと二人は「そうですか」と微笑みながら元のポジションに戻り、取り締まりと取り締まられを続行するのだった。

 二十歳を過ぎてからもよく転ぶ私は顔面から流血しながら電車の吊革にもたれていることもあったし、朝の通勤電車で貧血起こしてぶっ倒れたこともあったが、満員電車のクセしてささっと周囲の人々が引くことはあっても「大丈夫ですか?」なんて言われたことはまずない。具合が悪くてホームの端に座り込んでいるときに声をかけてくるのは、ここ日本では、たいがい若い女性だ。ハッキリ言って、今私は愚痴っているのだ。"グローバル・スタンダード"という言葉は卑屈な造語で嫌いだが、そんなに欧米の"当然"に従おうってんならこのへんからどうにかしてもらいたいもんである。


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