バーチャルワインバー
「天孔雀亭(amano‐kujaku‐tei)」
  --王様の赤ワインを探して(その12)--

 文・写真/中山慶太

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マエストロの書斎にて。
「すべては自然のままに」の言葉に反して、
バルトロ・マスカレッロのワインは不作年でも
驚くほど濃厚だ。
これは収穫した葡萄を厳選している証しか。
ただし収穫期の雨に祟られた1994年のバローロ
は欠番。

 


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『今週のワイン』
ランゲの長老が手がけるバローロは、丘陵の歴史を
遡るタイムマシーンだ。
カンティーナ・マスカレッロの四十年、ひとまわり
大きいボトルはバローロ1957年。中央は70年代の
グッド・イヤー1974年。右は1993年、ラベルは
オーナー手書きのイラスト入り。レギュラーラベル
の1993年はリリースされたばかり、日本でも限ら
れたショップで購入できる。

ろそろ夜も更けてきましたね。ランゲ丘陵の赤ワインをめぐるお話も、このへんでおひらきにしましょう。長いおしゃべりにお付き合いいただいたお礼に、とっておきのワインをお出しします。
 こちらのボトルは、バローロ村の小さな醸造所『カンティーナ・マスカレッロCantina Mascarello』の作品です。当主であるバルトロBartolo・マスカレッロ はランゲ丘陵の長老のひとりで、伝統的な醸造法を遵守する造り手として知られています。
「わしは父の世代から学んだことを忠実に実行してきた」と、老マスカレッロは語ります。「畑の手入れを怠らず、人手や機械に頼らず、自然が与えてくれるものを最大限に生かす努力を続けてきた。それもこの小さな醸造所だからできたことだよ」自分は職人で、事業家になりたいと思ったことはない。そう言い切る彼の醸造法は、この数十年間ほとんど変わっていません。彼の仕事場には、バリックもステンレスタンクも存在しないのです。ただひとつ変わったことといえば。
「最近、ラベルに畑の名を入れるようになったのですね」という私の問いに、老人は苦笑しました。
「ここを訪れるアメリカ人たちに、クリュ(畑)はどこだ、としつこく聞かれるのでな」彼はちょっと鼻を鳴らすと、
「そう、クリュはフランス語だよ。彼らはヴィーニャ(畑)というイタリア語も知らんのだ。だが、わしのバローロは四つの畑の収穫を合わせて造る。もちろん比率はその年の作柄によって変えるよ。昔は皆、そうやっておった。たいせつなのは、バローロはどうあるべきか、というイメージじゃよ」その姿をひたすら追い続ける老人の仕事は、時代とはかけ離れてしまったように見えます。
 おやおや、また話が長くなりました。それではこのワインをお飲みください。ランゲ丘陵の風景を想像しながら……そこには、変わっていくものも、受け継がれていくものもあります。
「次の世代は、自分が信じるワイン造りを追求すればいい。だが、わしのワイン造りはすべて自然のなせるままに」老マスカレッロは、醸造所の薄暗い一角に陣取ってつぶやきました。「わしはガイアとは違う。よく見ておきなさい、これが最後のモヒカンじゃよ」と。

*次回は新春特別企画『ワイン愛好家のご法度集』をお届けします。


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バーチャルワインバー『天孔雀亭』からプレゼント!

今月は豪華版。ボルドーやバローロの赤ワインに欠かせないクリスタルのカラフ(デカンター)を1名様にプレゼント。チェコ製です。
応募はposteriのコーナーからどうぞ(『天孔雀亭』の感想も書いてね)。


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