バーチャルワインバー
「天孔雀亭(amano‐kujaku‐tei)」
  --『真冬に白ワイン(2)』--

 文・写真/中山慶太

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葡萄の樹は放っておくとどんどん伸びる。
ボルドーをはじめとするヨーロッパでは、ワイン用
の葡萄は垣根栽培が主流だけど、ごく稀に棚づくり
で栽培している地方(品種)もある。


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『今週のワイン』
ものすごく大雑把に分けると、良質のソーテルヌ
にはふたつのタイプがある。ひとつはイケムや
ファルグに代表される重厚で豊満、凝縮感にあふれ、
そして熟成に時間がかかるもの。もうひとつはやや
軽やかで華やか、そして新鮮な果実味を身上とする
もの(バルサックにはこの系統が多い)。
『シャトー・リューセックCh.Rieussec』は前者の
なかでも最良のひとつとされ、しかも値段は決して
高くない。
1984年よりポイヤック村の超有名シャトー、
ラフィット・ロートシルトの経営になり、高品質に
磨きがかかった。年間生産量はおよそ6000ケース。
写真の1989ヴィンテージはようやく色が濃くなって
きたが、熟成にはあと10年が必要か。

ーテルヌは、日本では『貴腐(きふ)ワイン』の名でも知られています。これは葡萄につく黴を利用したワインの総称で、他にはハンガリーのトカイTokaji(Tokay)、ドイツのベーレンアウスレーゼBeerenausleseまたはトロッケンベーレンアウスレーゼTrockenbeerenauslese、イタリアのピコリPicolitなどが有名 です。これらはすべて貴腐菌(ボトリティス・シネレア菌)と呼ばれる細菌に侵された葡萄から造られ、それぞれに個性は異なりますが、おしなべて強烈な甘みとある種の香りを持っている。それは他の飲み物ではけっして代用がきかない味わい、文字どおり高貴な香りと言われます。
 ソーテルヌ(と、その他の貴腐ワイン)が一部の愛好家に珍重される理由は、その稀少性によるところも少なくありません。なにしろこの菌が葡萄に付着するのは、ボルドーでも限られた地域の畑だけなのです。天の恵み、とおっしゃるのですか。いえ、それがシャトーのオーナーたちにとって天佑と断言できないところに、ソーテルヌの悲劇はあるのですが。
 その地域、ソーテルヌ村とバルサック村を中心とする5つの村には晩秋になると朝霧が漂い、そして午後には乾燥した晴天が訪れる。この繰り返しが、畑に植えられたセミヨン種の葡萄に付着した貴腐菌をゆっくりと成長させます。そう、きわめてゆっくりと……。貴腐菌の成長がはじまるのは、通常は葡萄の実が完熟する9月末ごろからですが、それが収穫されるのは10月から11月にかけてのことです。ソーテルヌのシャトーのオーナーや醸造技術者たちは、ボルドーの他の地域で(いや、フランス全土で)行われる収穫を横目で眺め、ふつふつたぎる発酵槽の音にも耳を貸さず、辛抱強く待ち続けます。彼らの葡萄が貴腐菌に覆われ、水分をうばわれて無残に萎びていくのを。

注)一般にソーテルヌと呼ばれるワインのAC(原産地呼称)はソーテルヌまたはバルサックBarsacである。後者の村のシャトーは独自のACを名乗る資格を与えられているが、最近は『ソーテルヌ=バルサック』と、両方のACをエチケットに記すシャトーも多い。どっちにしても、ボトルの中身をACだけで判断することはできないのだが。


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