|
6 - 幻想的なロマンティック・バレエ
19世紀の初めになると、伝統や権威に反抗し、自由で神秘的なものを重んじるロマン主義がヨーロッパを席巻する。エキゾチックな異国趣味、妖精や悪魔が登場する幻想的なストーリーの「ロマンティック・バレエ」が誕生する。
ポワント(つま先立ち)による人間離れした軽やかな動き、現在ロマンティック・チュチュと呼ばれるくるぶし丈のふんわりとした薄布のスカートも取り入れられ、パリ・オペラ座を中心にヨーロッパ中で人気を博した。
現代でも数多く上演される「ラ・シルフィード(1832年)」「ジゼル(1841年)」「コッペリア(1870年)」などもこの頃の作品。
幻想的な、つまりこの世でない世界を表すために一番効果的なのは、重力に反することかも知れない。実体のないはかない風情を表すために考え出された、軽く透ける素材の衣装チュチュと、ポワント(つま先立ち)のためのトウ・シューズはバレエ界の二大発明と言っていいだろう。今のように明るい照明のない時代に、白いふわふわが舞う様子ははさぞやびっくりしたことだろう。
7 - ロシアで完成したクラシック・バレエ
フランスの宮廷バレエが伝わっていたロシアでは、1738年にはバレエ学校が創設され、パリ、ロンドン同様に繁栄していた。
フランス文化への憧れと、自由さを併せ持ったロシアでは、独自の舞踏テクニックが開発され、二人で踊るグラン・パ・ド・ドゥなどの様式が完成された。ドラマを主体とした「ロマンティック・バレエ」に、ストーリーに関係なく踊りだけを見せる「ディヴェルティスマン」と呼ばれるシーンが取り入れられ、現在のバレエの構成が整えられた。
ロマン主義に対して、古典的な要素を取り入れようとした「新古典主義」にちなんで、この時代のものはクラシックバレエと呼ばれるようになった。
女性のポワント(つま先立ち)を活かした技術が目覚ましく発展し、大きな動きを可能にした「クラシック・チュチュ」と呼ばれる丈の短い衣装が考案され、ロマンティックバレエの時代には1回回るのがやっとだったピルエット(駒のような回転)が、32回のフェッテ(片足を打ち付けるように用いる連続回転)まで演じられるようになったのだ。
人間の肉体の限界まで極めた技術が見るものを、びっくりかつ感動させるバレエの時代になったと言える。
チャイコフスキーに作曲を依頼した「眠れる森の美女」が1890年に上演されて大成功をおさめると、続いて「くるみ割り人形」「白鳥の湖」が依頼され、三大バレエが生まれた。
いわゆるクラシック・バレエと呼ばれるスタイルは社会情勢の変化と共にイタリアで誕生し、フランスで育ち、19世紀のロシアで確立されたバレエなのだ。
|
<--Back Next作品と見どころ−1-->
|
|
 |
| 拡大表示--> |
ロマンティック・チュチュ
1832年上演の「ラ・シルフィード」で初めて用いられたロマンティック・チュチュとトウシューズ。当時のロマンティック・バレエにちなんで、このロングスカートタイプの衣装をロマンティック・チュチュと呼ぶ。軽く透ける素材が動くたびにふわふわとして、幻想的な雰囲気を感じさせる。
写真提供:井上バレエ団 |
 |
| 拡大表示--> |
クラシック・チュチュ
ロシアに渡ったバレエが新古典主義として開花し、生まれたミニスカートタイプの衣装をクラシック・チュチュと呼ぶ。この衣装によって足の動きが自由になって、大きく躍動的な踊りが可能になった。
写真提供:井上バレエ団 |
|