マカロニアンモナイト
webマガジン「マカロニ・アンモナイト」月刊特集
和−Time Rhythm
〜和時計の暮らし〜 前編
文・写真/しばやまみゆき  Flash時計/Rey.Hori
前編目次 1 2 3 4 5 2002年11月掲載


§江戸 Time§

 江戸時代の時間表現は、落語や時代劇にみることができる。例えば『ときそば』という有名な落語。蕎麦の代金を「一、二、三…」と八まで数えて「今何時だい?」と時刻を尋ね、「ヘイ、九ツで」との答えに続けて「十、十一 …」と数えて一文ごまかす。これを見ていた与太郎が翌日これを真似するが、「ヘイ、四ツで」と答えられて、また「五、六、七、八」と繰り返し数えて結局、四文多く支払うはめになる。

九ツ”は真夜中で“四ツ”はそれより一刻(いっとき)=約2時間くらい前だ。余計にお金を払ってしまうドジさだけでなく“九ツ”まで待てずに失敗した与太郎のキャラクターも面白い話なのだ。

「お江戸日本橋七ツだちぃ〜」という歌もある。日の出前に星が見えなくなる時刻が「明六ツ(あけむつ)」で“七ツ”はそれより一刻(いっとき)前だから、外は提灯が必要なほど真っ暗だ。「高輪夜明けて提灯消すぅ〜」と歌詞が続くように、てくてく歩いて高輪辺りに着いた頃に明るくなってくるというわけだ。
 不定時法だから季節にかかわらず「七ツだち」は真っ暗な頃の出発だとわかるけれど、定時法で考えると“七ツ”は午前4時頃だろうから、冬なら真っ暗、夏ならもう明るくなっている頃だ。

 不定時法は季節や昼夜によって一刻(いっとき)の長さが変化する。時刻と日の明るさは一致しているから、お天道様に合わせた暮らしにはとっても便利なんである。






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セイコー時計資料館にある和時計保管室。最適な湿度や温度になるよう管理されている。

§江戸の暮らし§

 江戸の時代は「日が昇れば生活が始まり、暮れればおしまい」というお天道様中心の生活だ。なぜかといえば、夜は暗い。行燈の明かりは暗く、「油一升、米三升」といわれた菜種油は米の約3倍もするほど非常に高価なものだった。もう少し安い、鯨や鰯の油は、化け猫には好まれたのだろうけれど、油煙が多くて臭かった。どのみち早く寝た方が経済的だから、否応なしに早寝早起きだった。

 時の基準となる「明六ツ(あけむつ)」「暮六ツ(くれむつ)」は生活の始まりと終わりでもあり、江戸城や見附の門、商店の開閉はこの時刻だった。雇人は「朝五ツ」から「夕七ツ」の勤務時間だったというから「明六ツ」の頃には家を出て「暮六ツ」の頃には帰宅していたのだろう。もっと気ままに暮らせそうな職人だって「明六ツ半」から「夕七ツ半=暮六ツの半時(はんとき)前」まで働いていた。

「暮六ツ」に星が見え始めて、それから一刻(いっとき)過ぎた「宵五ツ」頃に子供たちを寝かしつけて、「夜四ツ」には長屋の木戸が閉まり、「真夜九ツ」までには夜回りが終わる。日の出とともに起床どころではない。すでに働き始めてた。そのくらい明るさは貴重だということなんだろう。

※通常は明るさで分かるので、単に「五ツ」「四ツ」と用いられますが、ここでは時間帯がわかりやすいよう「朝五ツ」「宵五ツ」と表現しています。





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よーく見ると文字盤の文字配列が逆順。これは針の位置が固定されていて、文字盤が右回りに動くタイプのもの。文字盤を回転させる方が難しそう...?


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