マカロニアンモナイト
webマガジン「マカロニアンモナイト」特集
郵便切手のすべて
〜原始メールにアートを乗せて〜【前編】
文・写真/河野朝子
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2003年11月掲載

■3■ 切手ができるまで −2−

人の話はとことん聞く

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私のイチ押し『模型航空世界選手権(1995)50円』の原画。デザイナーは玉木明氏。



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原画の拡大図。もちろん玉木さんの手書き。ラジコン飛行機の日本チャンピオンなどにちゃんと取材して描き起こされたものである。
※写真提供:日本郵政公社




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これが切手本体。このオシャレで小粋な切手、私が最初に見たのは当マカロニ・アンモナイトの編集部から送られてきた定形外封書に張ってあったものだった。

 ここ10年の切手に関する最大の話題、イヤ、事件とも言えるのが、1997年1月28日、朝もハヨから各地の郵便局に大行列ができたことだろう。『戦後50年メモリアルシリーズ』の第5週の発売日だったのだが、切手にデザインされていたのは石原裕次郎、美空ひばり、手塚治虫+鉄腕アトム、であった。蒐集家でない人達もドッと押し掛けほぼ即日完売。このアイディアには正直驚いたものである。

 で、その裕次郎やひばりお嬢やアトムの切手を制作する手順なのだが、そのへんにある写真や原画をホイと借りてきて「できちゃいましたー」というワケではなかった。石原プロを通しまき子夫人に会って、お嬢令息の加藤和也氏に会って、手塚画伯の未亡人にも会って使用する写真の選択についての意見を聞いたり、手塚プロにアトムの原画を依頼したり、、、てのまでもが切手デザイナーによって行われていたのだ。

 最近一番話題を呼んだシリーズ切手と言えば『20世紀デザイン切手シリーズ』だ。お願いだからもったいなくて使用できない切手は発行しないでください、と言いたくなるような(笑)アート性の高い1枚のシート全体で20世紀の記憶が表現してあるものが、全17集のシリーズとして発行されたものだ。

 そのときすでにドラえもん切手も出ていたので、ゴジラがデザインされているくらいまでは心構えがあって驚かなかったが、ガンダムと来た日にゃ切手もついにここまでやってくれたか! と感慨深かった。

 通常、切手で使用される意匠に個人の肖像や版権物などがある場合は石原裕次郎や美空ひばりの例ように切手デザイナーが直接出向いて交渉などを行うのだが、このときばかりはさすがの物量に権利者との交渉はアウトソーシングされたらしい(ただし皇室関係=宮内庁との交渉を除く)。

 なんて話を聞くと、続々とアイディアが出され、続々と具体化されているように思えるかもしれないが、そこはやはり国家の発行する有価証券。切手デザイナーの個人的なアイディアを勝手に切手化することはできない。切手にはきちんとした裏付けが必要なのだ。

 例えば1991年から発行が開始された『水辺の鳥シリーズ』は、1993年に日本の釧路で開催された第5回ラムサール条約締約国会議*で完結できるように発案企画されたものなのだが、それとて鳥類図鑑をコピペして安直にできたものではない。

 環境庁(現・環境省)や山階鳥類研究所、日本野鳥の会などにオファーが出され諮問委員会が結成され、そこでいわば『鳥のプロ』達によるミーティングが重ねられ図案で採用する鳥を選んだりしたのである。デザイナーが「この鳥カワイイじゃん!」というノリで作図したりはできないのだ。

 このように、特にシリーズ切手が企画されるときは必ず外部に諮問委員会が設置され各方面からの意見をちゃんと聴取して最終的なデザイン化が行われる。人の話を素直に聞けないいい加減なヤツ(私か)は到底切手デザイナーにゃなれんってことだね。


注1:ラムサール条約締約国会議
 ラムサール条約とは『特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(Convention on Wetlands of International Importance Especially as Waterfowl Habitat)』の通称である。3年おきに各締約国で会議が行われる。
※協力:日本郵政公社
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