マカロニアンモナイト
webマガジン「マカロニアンモナイト」特集
郵便切手のすべて
〜原始メールにアートを乗せて〜【前編】
文・写真/河野朝子
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■4■ 切手ができるまで −3−

やっとこ作画

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世界遺産シリーズ切手第1集『日光の社寺』で使用された写真のオリジナル。
※撮影:兼松史晃氏
※写真提供:日本郵政公社

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切手化されたもの。



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世界遺産シリーズ切手第9集『白川郷・五箇山の合掌造り集落』で使用された写真のオリジナル(シートの背景で使用)。
※撮影:兼松史晃氏
※写真提供:日本郵政公社

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これは切手になったもの。
※撮影:兼松史晃氏
※写真提供:日本郵政公社


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上記が切手化されたもの。

 はてさて、切手デザイナーは絵だけ描いてりゃいい、デザインだけやってりゃいい、なんつー甘いもんじゃない、ってことが重々理解できたところでやっと作画、デザインである。

 ここにこぎ着けるまでにすでにヘトヘト感が漂っているが、デザイナーとしてはむしろここからが本番でもある。

 まず、郵便切手というあの小さい世界の中にあらん限りのアイディアを意匠として詰め込むわけだから、原画ではよくても小さくなったらショボかったです、なんてのは許されない。そういったことを計算して原画を作成していく必要があるのだ。あんまり細かいことをやりすぎても切手上で表現できないし、だからって大雑把でいいというものでもない。また、自分の趣味に走りすぎてもいけないし、『広く大衆が使うもの』を意識する必要もある。

 原画の作成は切手デザイナー達が行うこともあれば、外部の作家に委託されることもある。「今回はこういう絵柄だからあの人に頼もう」なんてのの選考も重要な仕事のひとつだ。また、その原画に額面や『日本郵便』『NIPPON*』などの文字を配置するのにもいちいちセンスが必要とされる。確かにこのへんが曖昧だと各郵便局で額面をチェックするのも大変そうである。

 それから作画の元になる写真撮影にも力を入れなくてはならない。その撮影は主に切手デザイナーの兼松史晃氏が担当していて、全国飛び回って文化財やらなにやらの撮影を行っている(外部カメラマンに委託されることもある)。これにもあとで加工されることを考慮し、かつ、私的な作品とは切り離された視点を求められることは間違いない。


 私の記憶だと写真そのものが切手化されるのは重要文化財の絵画などの『複写』と呼ばれる写真がメインだったと思うのだが、最近は風景や人物の写真もそのまま切手となることが多いように見受けられる。もちろんその場合も、撮影された写真のポジフィルムがそのまま印刷局に提出されるわけではなく、より切手らしい、切手として映える色彩やコントラストになるようにパソコン(色彩再現度が高いMacintoshを使用)によって手が加えられ印刷に回されるのだ。

 といったワケで最近はコンピューターも切手デザインの重要な戦力となっている。世間からちょっと遅れて約5年くらい前に導入されたそうだが、来年の年賀ハガキ**だってパソコンから生み出されたものである(詳しくは後編で)。

 こうして次第にハイテク化されていく切手制作の現場であるが、その彼らが「次はこれでしょう!」と日本中の話題をさらうべく用意したのが新企画『科学技術とアニメーションシリーズ』である(総務省時代に決定されていた企画)。科学技術省とともに愛知万博を睨んで、各団体とタイアップしながら企画されたこのシリーズは来月、12月16日に第1集が発売されるのだが、これがまた「えーん、コレどうやって使えってんでしょう(泣)」ってくらい人に送るのがもったいない切手になってたりするのだ。

 昔はひとつのデザインの切手でだーっとシートが埋め尽くされていたけれど、特に最近のシリーズ切手はシート1枚に様々なデザインの切手が散りばめられ、全体として完結する物が多い。ってことはそのひとつひとつと全体を併せて全部デザインしなくちゃならないという意味でもあり、切手シート一枚全部おんなじ切手、ってもんより企画段階から作業量が多そうである。あぁ、だと言うのに、この先さらにめんどくさい作業が待ち受けているのだった。


注1:
 UPU(万国郵便連盟)の取り決めでは日本の切手には『NIPPON』と刷られていればよいことになっているが、通例としてたいがい『日本郵便』とも刷られている。

注2:
 来年の年賀ハガキは11月10日、年賀切手は11月14日が発売日である。毎年忘れて12月になって丸の内の中央郵便局まで買いに行く人=私の私的メモだけど



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※協力:日本郵政公社


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