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ヘリコプターに乗ろう!(後編)

文・写真/中山慶太  取材協力:本田航空株式会社
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2004年4月掲載


§再び空へ§


 さて、いよいよ体験飛行である。

 今回は本田航空が実施しているプログラムをそのまま体験することにしていたので、桶川飛行場の周辺を数分間飛ぶだけだ。正直、物足りないのではないかと思ったけど、これで都心あたりまで足を伸ばすとたいへんなコストがかかる。コストといえば「山で遭難した場合などにヘリを飛ばすと数百万円かかる」という話をきいたけど、どうなんだろう。

「遭難や災害時など、自衛隊機は無償で飛んでくれますが、機体の手配がつかずに民間機をチャーターするとどうしても費用は嵩みます。当社ではありませんが、以前はヘリをチャーターできずに人命が失われたことがありました」と久保さん。そういう事への反省もあって、最近は「非常時はコスト計算を後回しにしてまず飛ぶ」という風潮になったそうだ。固定翼機に比べて運用コストが高いヘリの利用は、一般人にはなかなか敷居が高いところがあるけれど、ヘリでなければできない仕事も多い。

 そんな話をしながら滑走路脇の芝地を歩いた先に、先ほどのAS350Bが待機している。

 二度目の飛行では後部座席から写真を撮りたかったので、副操縦士席は謹んでセヤマ・マリコに譲る。「え〜どうしようかな、乗っちゃおうかな」最初の飛行で安心したせいか、今度は彼女もあまり抵抗しない。甘いぞマリコ。

 コクピットに収まった道野機長がスターターボタンを押すと、ローターがゆっくりと回転を始める。回転が上がるにつれ、ヘリコプター特有の音が機内を満たす。おなじみの「バタタタ」という連続音である。この音は機内でもハッキリ聞こえるときとそうでないときがあって、ローターの回転数が一定なのに不思議に思っていた。

 道野機長によれば、あれは「ブレードスラップ」といって、ローターが自ら圧縮した空気を叩く衝撃で生じる音なのだそうだ。だから上昇中のヘリでは発生せず、一定高度での巡航や旋回中、あるいは下降中に特有の現象だという。

 滑走路上と上空の固定翼機がクリアになったタイミングを見計らって、道野機長は左手のレバーを引き上げる。これはメインローターのコレクティブ・ピッチコントロールを司るレバーで、クルマのアクセルのようなものだけれど、機体の動きは前後でなく上下である。同時に右手はスティック状の操縦桿を操作している。これは前後左右の進行方向を決める(クルマのハンドルにあたる)サイクリック・ピッチコントロールレバーだ。

 機長の両手首の繊細な動きで、機体はゆっくり地上を離れて時計方向に270度旋回、滑走路を舐めるように上昇を始めた。









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コクピットはまるでサンルームのように明るい。きわめてビジネスライクなつくりだけど、内装のプラスチックの素材感にはそこはかとなく80年代フランス車の雰囲気が漂う。製造元のアエロスパシアル社はドイツの航空企業と統合し、現在は「ユーロコプター」と名前を変えている。メーターナセル正面の操縦桿がサイクリック・ピッチコントロールレバー。

§ヘリコプターの歴史(6)§

 第二次大戦の直前に実用化されたヘリコプターは、今に至るまでその基本的な成り立ちに大きな変化はない。おもに軍用として用いられる双発ヘリ(ふたつのメインローターを逆転させて回転トルクをうち消す方式)にしても、すでに1930年代から研究が進められていた。この間に起きた最大の進歩は、むしろ発動機にある。

 1950年代にフランスのチュルボメカ・ターボシャフト社が開発したガスタービンエンジンは、固定翼機用のジェットエンジンの構造を応用したもので、ジェット燃料(ケロシン:組成は灯油に近い)を用いて小型軽量かつ大馬力を取り出すことができた。その後のヘリコプターの発展は、このエンジンの普及によるところが大きい。

 なおこの形式のエンジンを装備した機体は通称「ジェットヘリ」と呼ばれるが、固定翼機のジェットエンジンと違い排気そのものに推進力はなく、回転翼の理論限界を超えた速度を出せるわけでもない。ふた昔ほど前に米国のTVドラマで「超音速ヘリ エアーウルフ」なんてのがあったけど、あれはいったいどういう構造になっていたんだろう?

ヘリコプターの歴史
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桶川飛行場上空を飛行する道野義寛機長。仕事で空を飛べるのはパイロットの特権だけど、こんな機体を操れるのは本当に羨ましい。ところで背後の壁には「非常口」の表示があるが、空中でそう言われても困ります。
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