マカロニアンモナイト
月刊特集
写真

ヘリコプターに乗ろう!(後編)

文・写真/中山慶太  取材協力:本田航空株式会社
後編目次 5 6 7 8 9
2004年4月掲載


§驚異の高機動を体験する§


 滑走路を舐めるように飛ぶ機体は、前のめりの姿勢のまま急上昇する。その加速感は先ほどの飛行とはまったく違い、道野機長の「本気」が伝わってくる。ある程度の高度に達すると、そこから先は文字通りジェットコースター感覚、いやレールが外れたジェットコースターもかくやという、アクロバティックな機動の連続だ。機内はローター音と副操縦士席のマリコの悲鳴で満たされる(思わず笑ってしまったが、こちらもそんな余裕は最初のうちだけ)

 それにしてもこの運動性は凄い。ニュートンが発見した万有引力の法則も、質量を持つ物体につきまとう慣性の法則もまるで無視したように、重量1トンの機体が道野機長の両手の動きに瞬時に反応するのだ。水平に見えていた地平線が次の瞬間に垂直に転じ、そこからいきなり空中に静止、さらにその場で360度回転する。後で知ったのだが、このホバリングしながらの水平回転には両足で操作する「アンチトルクペダル」(テールローターのピッチを制御する)を使うらしい。

 夢中でシャッターを押していたら、36枚撮りのフィルムがあっという間に終了した。あわてて持ち替えたサブ機も同様。この日は高速連写を予想してデジカメを持ってこなかったため、機上でフィルム交換する羽目になったのだけど、乗り物に強い僕もこれにはハッキリいって酔いました。ヘリ体験にはデジカメがお勧めである。ちなみに同乗した河野朝子FinePix F700でムービーを撮っていた。目を離して撮れる液晶ファインダーはこういうときに便利だ?

 そうして遊園地の乗り物をぜんぶ足してコマ落としにしたような数分間の飛行が終わり、機体はふたたび滑走路に向かう。道野機長によれば、アプローチからタッチダウンせずにフライ・パスする飛行シークエンスには、エンジンを切ったまま降下する「オートローテーション」というテクニックを使っていたという。

「気がつきましたか」いえぜんぜん。「そうでしょう。ほとんどわからないと思いますよ」

 そう、ヘリコプターはまんいち飛行中にエンジンが停止しても、そのまま墜落することはない。空気の力で空転するメインローターが翼の役割を果たしてくれるから、自由落下よりもずっとゆっくりと下降することができ、その間の機体制御もあるていど可能である。ヘリの飛行原理はそのまま安全に結びついているのだ。

 滑走路をパスした機体はゆっくりと駐機場に向かう。先ほどとうって変わったような平和な飛行ぶりに、あらためてこの乗り物の二面性を実感するのだった。









拡大表示-->
上空500メートルで旋回中、叫び疲れて放心状態のセヤマ・マリコ副操縦士。「一生の想い出になりました」という彼女、本気で怖かったらしい。

§ヘリコプターの歴史(7)§

 ところで2004年現在、米国で「ベルV-22オスプリ」という機体の開発が進められている。これは翼の先端に大型のローターを持つエンジンを装備し、その翼の角度を垂直〜水平に90度変化させる「偏向翼機」である。垂直離着陸と時速400km以上の高速飛行が可能という、回転翼と固定翼の長所を併せ持つ機体なのだが、このコンセプトは第二次大戦中にドイツのフォッケ博士が考案したものとまったく同じだ。フォッケのヘリコプターの系譜が半世紀の中断の後に甦ったということだろうか?

 オスプリは軍用で、その開発はかなり難航しているようだ。でもこの機体が実用化され、民間機として普及すれば、ヘリコプターの概念はまた違ったものになるかもしれない。その時操縦ライセンスは固定翼と回転翼、どっちが必要になるのだろう。

ヘリコプターの歴史
→(1)→(2)→(3)→(4)→(5)→(6)、→(7)


拡大表示-->
めげないマリコは着陸後に再度記念撮影。立ち直りの早さは流石であった。ちなみに彼女がこの日撮影した写真は「東京レトロフォーカス」(→4/7更新分)に掲載中、ぜひご覧ください。
<--Back    -->Nextやっぱりヘリは面白いへ


表紙へ特集目次へ

Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部