マカロニアンモナイト
月刊特集
写す人 第三回
写真

写真用レンズの最前線を探る

−新生フジノンを訪ねて−(前編)
文・写真/中山慶太  取材協力:フジノン株式会社

前編目次【1】234 2005年1月掲載

§再び、聖地巡礼§


 写真用レンズは不思議だ。発明されて二世紀近くの時が経っても、いまだに技術は進歩を続けている。最先端のテクノロジーがそれまでの基準を塗り替えるいっぽうで、旧き佳き時代の製品を愛して止まないひとも後を絶たない。

 写真用レンズは面白い。コンピュータの支援で光学性能が人間の眼の限界を超えた今でも、設計者は日々新たな発見に胸を躍らせているという。
 なぜこれほどまでにレンズは写真愛好家を魅了するのか。それはある命題に対する解が無限にあり、そこにつくり手の創意を見ることができるからではないだろうか。


 前回の特集「写真用レンズをつくる人たち」から丸二年、ふたたびレンズ設計者たちを訪ねる機会をいただいた。巡礼先はおなじさいたま市だが、二年の間に写真をめぐる状況は変化し、テクノロジーも取材先の事業形態もずいぶんと進化したらしい。

 目に見えてわかる違いは社名にある。2004年10月、富士写真光機株式会社は「フジノン株式会社」として新たなスタートを切ったのだ。同社は富士写真フイルムグループにあって、主にカメラと写真用レンズ設計を手がけ、その光学技術は放送や映画製作分野から衛星写真、そして医療分野にまでひろがっている。


「フジノンの独自性ですか? それは何と言っても、高画質技術を核にした事業展開にあるでしょう。医療用の内視鏡から携帯電話、そして衛星写真まで高画質をキーワードに製品開発を行っています」

 前回の取材でもお世話になったフジノン広報の天野高宏さんは、同社のパンフレットを指さして熱っぽく語る。では、写真用をはじめとするあの精緻なレンズづくりの現場はどう変わったのだろう。

「もちろんレンズの設計製作は今でもフジノンのコア技術です。前回に取材いただいた折りは、ちょうど当社のレンズ研磨職人が“現代の名工”という称号をいただいた頃でしたが、つい先日におなじ称号をレンズの組み立て・調整の職人がいただきました」

 それは精密なレンズエレメントを何十枚ももちいる放送用ズームレンズの組み立てに従事する方であるという。コンピュータ支援の設計・製造・組み立てが当然のこの時代、まだまだ熟練の技が活かされる現場があるという事実には、やはりロマンを感じてしまう。

「近年、急速に進化した技術といえば、やはりデジタルイメージと光学技術の融合ですね。当社でも監視カメラにこのテクノロジーを取り込み、魚眼レンズで撮影した広範囲の画像を………」

 と、天野さんの熱っぽい語りはまだまだ続くのだが、それは後編で紹介するショールーム(技術のワンダーランドだ)に譲って、そろそろ読者の興味の中心に話を移そう。不思議さと面白さがいっぱいに詰まった分野、趣味の写真用カメラとレンズをつくるひとたちへのインタビューである。

フジノン株式会社
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フジノン株式会社・本社工場。世界に誇るカメラ・レンズ技術の聖地は、埼玉県さいたま市の閑静な住宅街にある。




















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最新の高画質技術が息づくフジノンのショールーム。手前の高倍率双眼鏡はその明るさと高画質を活かした天文観測にも用いられ、実に15個の彗星発見に寄与している。鏡胴のサインは百武彗星を発見された故・百武裕司氏のもの(百武氏はこの双眼鏡で2個の彗星を発見した)。


フジノン「大型双眼鏡」製品ページ


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前編目次【1】234 2005年1月掲載


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