マカロニアンモナイト
月刊特集
写す人 第三回
写真

写真用レンズの最前線を探る

−新生フジノンを訪ねて−(前編)
文・写真/中山慶太  取材協力:フジノン株式会社

前編目次【2】34 2005年1月掲載

§ここまで進化したフィルムカメラ§


『NATURA S』(ナチュラS)というカメラをご存知だろうか。2004年10月に登場した、3種類のカラーバリエーションを持つこのコンパクトなフィルムカメラはおもに30代のひと、それも女性を意識して」企画された製品だ。にもかかわらず、登場するやいなや熱心な写真愛好家にも強烈にアピールした。実は筆者の周りにもすでに何人ものユーザーが生まれている。それもプロやキャリアの長いアマチュアばかりである。

 なぜこのカメラがそれほど注目を集めたのかといえば、答えはひとつ。搭載しているレンズが前代未聞のスペックを持つからだ。24mmという広い画角(ひと昔前なら立派な“超広角レンズ”である)を持ち、しかも口径比はF1.9。通常のおなじスペックを持つレンズより優にひと絞り分は明るい。一眼レフ用レンズでこの明るさを持つ製品はほとんど無く、あったとしてもそれは巨大な前玉と大柄な鏡胴の組み合わせでなければ実現不可能だろう。

 だが、テーブルに置かれたカメラと、そこから取り出したレンズユニットは驚くほど小さい。


「確かにNATURA Sの設計にはチャレンジングな目標が設定されました。ある意味“フィルムカメラだからできること”の限界を極める意味もあったのです」

 こう語るのはフジノン・カメラ事業部の石黒稔さんと光学設計部の鈴木隆さん。石黒さんはNATURA Sの全体設計をとりまとめ、鈴木さんはレンズ設計を手がけたという、ともにベテランのエンジニアである。

 それにしても、フィルムカメラだからできること、とはどういう意味か。

「やはりデジタルとの差別化ですね。今回は“人間の眼で見える(肉眼で確認できる)環境はすべてノンフラッシュで撮影可能”という目標を立て、そこからレンズのスペックが導き出されました」

 ノンフラッシュ撮影へのこだわり。それは“その場の光で、雰囲気を写し撮る”写真術の提案なのだろうか。

「そうですね。NATURA Sの企画提案は、そもそもフィルムづくりの現場から生まれたのです。これまでにない高品位な画質を持つ超高感度フィルムの開発と、その性能を最大限に引き出すカメラ。それをどなたにでも手が届く価格で提供すること」ここに開発目標が置かれたという。

 それにしても、と思う。なぜ24mmか。どうしてF1.9なのか。このマニアックなスペックの秘密は、しかし単純な理由で決まったという。

「それはですね、まずカメラボディありき、だったのです」


 NATURA Sのボディは、実は『Silvi F2.8』というカメラを母体としている。コンパクトなズームレンズ搭載機、しかもF2.8という明るさのレンズで人気を博したフィルムカメラである。

「そのボディの基本骨格をできる限り流用し、レンズのスペースを最大限に使って設計する。そこから自然に焦点距離と口径比が導き出されました」

 と、鈴木さんは事も無げに仰るのだが、そんなに簡単なことではもちろんない。テーブルに広げられたレンズ構成図からは、“フィルムカメラだからできることの限界を極める”という言葉の真意が伝わってくるのである。

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フジノン(株)カメラ事業部で開発を統括する石黒稔さん。「個性の強い」レンズ設計者をまとめ、ボディとレンズの「コンマ2mmの綱引き」に大岡裁きを下すひとである。










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おなじく、光学設計部の鈴木隆さん。趣味は天体観測というから、レンズ設計は天職? 旧いレンズの設計にも精通され、筆者の疑問(愚問?)にもすらすらとお答えいただいた。取材当日は4時間以上もおつき合いいただき、感謝です。











NATURA Sのレンズ
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NATURA Sとそのレンズユニット。本文に書き漏らしたが、NATURA Sはカメラだけで完結するシステムではない。大口径レンズと高品位の超高感度フィルム、そして両者のメリットを最大限に活かす写真処理機(フォトプロセッサー、いわゆるインスタントラボ)の組み合わせで実現する、フィルムメーカーならではのトータルシステムなのだ。




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前編目次【2】34 2005年1月掲載


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