マカロニアンモナイト
月刊特集
写す人 第三回
写真

写真用レンズの最前線を探る

−新生フジノンを訪ねて−(前編)
文・写真/中山慶太  取材協力:フジノン株式会社

前編目次|【3】|4 2005年1月掲載

§大口径レンズという伝統§


 NATURA Sのレンズ構成は6群7枚。前群は比較的コンパクトだが、後群はぎりぎりまで大きなエレメントが用いられている。まるで一眼レフ用のレンズを前後逆にしたような、一種独特の構成だ。

「一見するとそう思われるでしょうが、実はこれが伝統的な対称形レンズなのです」

 鈴木さんの言う“伝統”とは、つまり写真用レンズではもっとも素直なカタチとされる構成──中央の絞りを挟んで、その前後が対称になるエレメント配置──を意味している。なぜ前後対称が素直かといえば、レンズの性能を阻害する収差(光学的な歪み)をこの配置はかなり高いレベルでうち消すことができるからである。つまり“設計そのものの素性が良い”ということなのだ。

 いやしかし、構成図を拝見した限りはとても対称形には見えないのがNATURA Sのレンズである。

「いえ、エレメントのパワー配分(屈折の与え方)だけを観察すると、これは凹凸凹の伝統的な構成になっています。確かに昔の広角レンズとはだいぶ見た目が異なりますけど、現代ではコンピュータ支援の設計でこういう配置が可能になったのです。ところで大口径レンズといえば、こういう製品をご存知ですか」

 と、鈴木さんは傍らから二本のレンズを取り出してテーブルの上に置いた。

「うわ、これはもしかすると……フジノン50mmF1.2!」

 筆者も話には聞いたことがあるが現物を観たことのないレンズ。それが目の前にいきなり現れた。

「ええ、昭和30年頃に弊社で設計製造されたレンズです(一眼レフ用ではなく、いわゆるライカマウント)。当時は新種ガラスを用いた大口径レンズを各社で競って開発していたようです。弊社製のこのレンズは設計図が残っていますが、今観ると神業的なんです。なにしろ収差曲線が……」

 鈴木さんのお話を要約すると、それはレンズ設計に必要な計算を高速で行うコンピュータが存在しない時代の産物であるという。つまり要所を押さえた(というか、要所以外は目を瞑った)設計らしい。

「ですから、絞り開放では良く言えば味がある、悪く言えばコントラストが不足した“甘い描写”ですね。でも今のレンズ設計技術なら、大口径レンズでも絞り開放から高い光学性能を与えることができます」

 ということは、昔の設計者にコンピュータを与えたら、NATURA Sのレンズも実現可能だった?

「無理ですね。このレンズはもうひとつ、最新の技術を積んでいます」

 それがフジノンが世界に誇るテクノロジー、“非球面レンズ”であるという。

 その非球面レンズの詳しいお話は後編に譲るとして、NATURA Sにはこのレンズが2枚使われている。その2枚とも製造が難しいとされる“両面非球面”である。この設計・量産技術なくしては、NATURA Sのコンパクトなボディにこのスペックのレンズを積むことは難しかったそうだ。

 とはいえ、やはりレンズとボディそれぞれの設計者の間には、かなりスリリングなやりとりがあるという。

「やはりスペースの奪い合いですね。時には0.2mmとか、そういう寸法を巡って綱引きがあります」

 全体を統括する石黒さんによれば、「個性的で、主張が強いのがレンズ設計者。だからこそ面白い製品ができるんでしょう」とのことだが、フジノンの大口径レンズの伝統はそういう部分で受け継がれているのだろうか?

レンズユニット
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NATURA S と伝説のフジノン大口径レンズ2本。実はNATURA S 用レンズはF2の口径比で設計がスタートし、ほぼ完了していた。それを白紙に戻したのがトップの「コンマ1でも明るく」という鶴の一声だったという。「そこからレンズを再設計して、エレメントが1枚増えました」とは鈴木さんの談である。














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東京・恵比寿ガーデンホールで開催されたヘアサロン「boy」のライブをNATURA S NATURA 1600の組み合わせで撮る。画像だと明るく見える場内はかなり薄暗く、客席のカメラのほとんどはストロボが発光する条件。もちろんノーフラッシュ撮影だ。ナチュラ1600を装填したナチュラ Sは自動的に「ストロボOFF」にセットされる(設定変更で発光も可能)。コントラストの強い条件だがコスチュームのハイライトは白飛びせず、階調が残っている。



















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24mmの画角でステージに乗り出して撮る。レスポンスの良いNATURA S ボディ、大口径のSUPER EBC FUJINON 24mmF1.9レンズとNATURA 1600のコンビネーションは、光量が激しく変化するシーンにも余裕で対応できる。カットされた髪が落下するブレを観察すると、おそらくシャッタースピードは1/8秒前後。絞り開放までまだ余裕がある。



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