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NATURA Sがフィルムカメラの限界を極めるコンパクトカメラだとして、フジノンにはある意味、その対極に位置するカメラが存在する。中判のシステムカメラシリーズだ。ハイクラスのアマチュアはもちろん、多くの職業写真家に厚い信頼を寄せられるこのシリーズに、2年前より加わったニューフェイス。それが『GX645 AF Professional』、海外では『ハッセルブラッドH-1』という名称で知られている。
登場以来多くの賞に輝くこのカメラがどのようにして誕生したのか。異なる文化がせめぎ合うその舞台裏を知ることもこの日の取材の目的だった。GX645AFはあのスウェーデンの名門が共同開発の相手にフジノンを指名し、デジタル時代を見据えたカメラシステムとして設計されたのである。
「最初にはっきり言われましたよ。ツァイス製品に性能で劣るレンズならいらない、と」
フジノン・カメラ設計部でGX645AFのプロジェクトを統括する橋本史朗さんは、ハッセルブラッド社(以下、ハッセル社)とのコラボレーションが始まった頃を振り返り、こう述懐する。フジノンのカメラ事業部として初の国際共同開発がスタートしたのは、1999年のことという。
「フジノンとハッセルブラッドの関係は、『TX-1』(フルサイズのパノラマ写真が撮影可能な35mmレンジファインダー機:現在は改良型の『TX-2』に発展している)をハッセル社が認め、自社ブランドの『X-PAN』として発売した事に端を発しています」
橋本さんによれば「その信頼関係がGX645AFの共同開発につながった」のだというが、すでにハッセル社には長い歴史を持つ6×6のシステムカメラ(現在は『Vシステム』と呼ばれる)が存在しており、そのレンズには世界的に評価の高い独・カールツァイス社の製品が採用されている。
「ええ、一般にツァイスのレンズとハッセルのボディは不可分のように思われていますね。でも彼ら(ハッセル社の経営陣と設計陣)は、“良いものならブランドを問わずに採用する”という姿勢でした。ですからフジノンのカメラ技術、そしてレンズの性能もよく知っていて、それで声を掛けてきたはずです」
協議の結果、フジノンはこの新しいカメラシステムのフィルムマガジン、ファインダーユニット、そして交換レンズのすべてを手がけることになる。
「共同開発がスタートした時点で、カメラの骨格はほぼ決められていました。ハッセル社側でもそれまでに4年間をかけて開発していたのですね。またハッセル社の社内にも光学設計部門があって、ファインダーの基本コンセプトもそちらでまとめていました。フジノンはそれをリファインして具体化したのです」
「フィルムマガジンは完全にフジノンの設計です。ハッセル社は仕様を提示し、それをこちらでまとめ上げた。これは『GX680 Professional』(フジノンが設計と製造を行うプロ用・マルチフォーマット中判カメラ、現在はGX680IIIに発展)の応用技術ですね」
お話を伺っていると、このコラボレーションはとてもスムーズに進んだように思える。だが相手は頑固一徹で名を馳せる? スウェーデン人だ。異種文化が衝突することはなかったのだろうか。
「そうですね……(ハッセル社のひとびとの)最初の印象は、とにかく紳士的。それでも言うべきことはきっちり言ってくる。それと、基本にうるさい(笑)。とにかく一度決めた基本性能は絶対に譲りません」
その頑固な相手との共同開発はいかにして進んだのか。次号後編ではGX645AF開発の経緯、そしてデジタルカメラ用レンズ設計などのお話を伺います。登場するカメラによる作例写真も掲載、ご期待ください。
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フジノン(株)カメラ事業部でGX645AFの開発を統括された橋本史朗さん。初の国際コラボレーションではいろいろな苦労を経験された由。橋本さんに限らず、フジノン技術陣の方々は皆さんとても良い目をされているのが印象的でした。
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富士写真フイルムGX645AF Professional。デジタル時代を見据えて設計されたシステムカメラで、2004年12月の時点で「中判カメラ世界最速」のAF性能を持つ。搭載されるレンズはすべてフジノン製だ。ボディの質感の高さも素晴らしく、これはスウェーデンの工業技術によるもの、というお話は次号後編で。
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