マカロニアンモナイト
月刊特集
写す人 第三回
写真

写真用レンズの最前線を探る

−新生フジノンを訪ねて−(後編)
文・写真/中山慶太  取材協力:フジノン株式会社

後編目次5【6】78 2005年2月掲載

§驚異の速写性を実現するレンズ設計§


 GX645AF/ハッセルブラッドH-1が登場した際、そのレンズシステムには大きな注目が集まった。ハッセル社伝統のVシステムで多くの写真家を魅了し続けた独・カールツァイス製レンズに代わり、フジノンレンズが搭載されたからだ。

 現在は世界の写真用レンズでリーダーシップを取る日本の光学技術だが、かつてはドイツ製レンズを範とし、そのノウハウを吸収しながら技術を磨いていた時代がある。その技術進化のプロセスで、「日本のレンズは解像力優先、ドイツはコントラスト優先」という逸話も生まれた。お国柄の違いをわかりやすくイメージ化した説だが、じっさいにはそれほど単純なものではないし、現在はもっと複雑な要求を満足させる評価軸が採用されている。

 とはいえ、GX645AF用のレンズ設計ではフジノンとハッセル側で意志の疎通がスムーズになされたのだろうか?

「その点は問題ありませんでした。ハッセル社とは開発の当初からMTF*を評価軸にするという了解を得ていましたから」

 橋本さんによれば、ハッセル側からはツァイスと同等のMTFを基準にして欲しいとの要望が寄せられたという。フジノン設計陣としても、これは望むところであったようだ。

「完成したレンズに対する(ハッセル側の)満足度は高かったようです。性能至上主義の彼らがまったくクレームを付けてきませんでしたから(笑)」

 純粋な光学設計は別として、レンズ設計は苦労が多かったという。フジノン光学設計部の鈴木隆さんは「AF(オートフォーカス)用の中判レンズならではの設計の難しさがあった」と述懐する。

「(35mm判では当たり前のAF技術も)中判ではレンズエレメントの質量がずっと大きいため、いかに素早く動かすかで試行錯誤がありましたね。苦労の甲斐あって、結果として“645判クラス最速(2005年1月現在)”のAFスピードを達成できましたが」

 筆者も本特集の作例用にGX645AFを試用したところ、ストレスなく作動するAFの恩恵を実感できた。またAFモードから常時マニュアルフォーカス操作が割り込めるため、画面センターでの合焦後に周辺に素早くピントを移せるなど、構図優先での即応度も高い。ただしあまりにもストレスフリーで撮影できるため、従来の“設定をひとつひとつ確認しながら撮る”中判一眼レフとは撮影のテンポがまったく異なるので、この点は多少戸惑うこともあった。旧人類にはまことに贅沢な悩みというべきか。


 さて、GX645AFのレンズ群にはもうひとつのトピックスがある。それは将来を見据えた「デジタル対応」という設計指標だ。


*注:MTF(Modulation Transfer Function)=レンズ性能の指標となる評価基準のひとつ。レンズの結像性能を「被写体の持つコントラスト」の再現性に置き換えて評価する。通常は縦横の軸を持つMTF曲線図で表される。二次元平面上での解像度チャートによるテスト評価に対し、より実際の撮影結果に近い評価が可能とされる。ただしこの指標でレンズの結像性能を完全に把握することはできないので、レンズ設計の現場では他にもさまざまな評価基準が用いられている。

GX645AF用レンズ
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高い評価を得るGX645AF用レンズ「AF HC FUJINON」は現在9種類。既存の6本(35mmF3.5、50mmF3.5・80mmF2.8・150mmF3.2・210mmF4・ズーム50-110mmF3.5-4.5)に加え、2005年1月より3本(100mmF2.2・マクロ120mmF4・300mmF4.5)がラインナップに加わった。中望遠の100mmはシリーズ中もっとも明るい大口径レンズで、従来はレンズシャッターユニットのサイズの関係でF2.8止まりだった口径比の限界が克服されている。またマクロと望遠もともに待望の製品であり、この3本の登場でHCレンズシステムはほぼ完成の域に達したようだ。




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HC80mmで撮影。35mm版換算で約50mmという標準画角は扱いやすく、かつ使いこなしの奥が深い。これは最短撮影距離(0.9m)まで寄ったショット。絞り開放の被写界深度はきわめて浅く、睫毛に合ったピントが前髪ではすでにボケている。コントラストが高めのリバーサルフィルムでもご覧のように暗部階調は豊富に残っている。
GX645AF+SUPER EBC FUJINON HC80mmF2.8 + FUJICHROME ASTIA100F data: 0.6sec. F2.8




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HC35mmで撮影。画面周辺部の点光源にご注目いただきたい。絞り開放でもコマフレアの発生は見られず、倍率色収差も皆無である。2本のレンズの発色も素晴らしく、特に階調再現と色乗りの良さには感嘆させられた。またGX645AFボディの測光性能もきわめて信頼性が高いもので、今回はスポット測光を多用したがAEでも見事な露出値を示した。
GX645AF+SUPER EBC FUJINON HC35mmF3.5 + FUJICOLOR NewPRO400 data: 0.5sec. F3.5




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後編目次5【6】78 2005年2月掲載


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