webマガジン「マカロニ・アンモナイト」
月刊特集
マカロニアンモナイト

お花見へ行こう!〜サクラ前線 北上中〜(後編)

本文/本小まゆみ  写真/マカロニ・アンモナイト編集部  桜撮影テクニック/青木栄次郎

後編目次【5】678 2005年4月掲載

ソメイヨシノは、“染井の吉野”



“染井”で撮った、本場のソメイヨシノ
JR駒込駅から染井通りを歩くと、穴場のお花見スポット“染井霊園”に辿り着く。高村光太郎&智惠子のお墓があることでも有名だが、地元ではお花見の名所として親しまれている。
撮影/本小まゆみ 
使用カメラ:FinePix A203  撮影条件:AUTO標準  ISO100 F2.8 1/550秒
撮影地:東京都豊島区(2004年4月)



『日本で“サクラ”といえば、ソメイヨシノが有名』



 と前編でも書いたように、いまや日本のサクラの80%以上が、この“ソメイヨシノ”で占められている。気象庁が“標本木”にしているサクラも9割以上がソメイヨシノだ。

 じゃあサクラの種類はソメイヨシノだけなのか? というと、そうではない。実は、日本人にこれだけ親しまれているソメイヨシノという種は、日本に古くから自生してきた種ではないのだ。

 それを説明する前に“サクラ”がどういう植物なのかお話ししよう。

 サクラは、植物学上ではバラ科*に属しており、その多くが北半球の温帯に分布し、種類は約20〜30種あるといわれている。そのうち日本で自生しているのは、解釈や文献によっても異なるのだが、一般的には、
・ヤマザクラ
・オオヤマザクラ
・オオシマザクラ
・カスミザクラ
・エドヒガン
・マメザクラ
・ミヤマザクラ
・チョウジザクラ
・タカネザクラ
(別名:ミネザクラ)
の9種とされている。これらの基本種が交配することで、数多くの里桜(栽培種ともいう)が生まれ、その数は現在では約300種類以上にのぼる。

 ここで話しをソメイヨシノに戻そう。

 “ソメイヨシノ”の起源については諸説あるのだが、“オオシマザクラ”と“エドヒガン”の交配種であることは確かなようだ。簡単にいえば、ソメイヨシノは、オオシマザクラとエドヒガンの子供なのである。

 これが自然に交配したものなのか、人の手によって交配されたものなのかは未だに定かではないが、自生種ではない(接ぎ木などによって数を増やすしかない)ソメイヨシノが、いったいいつどのようにして日本各地に広まったのか。

→拡大表示

花と同時に赤味がかった若葉が出るヤマザクラ。
使用カメラ:FinePix F700  撮影条件:AUTO標準  ISO200 F2.8 1/58秒 マクロON 撮影地:東京都世田谷区・砧公園(2004年4月)





→拡大表示

真冬に咲く、早咲きの寒桜。
使用カメラ:FinePix F700  撮影条件:AUTO標準  ISO160 F5.6 1/240秒 撮影地:神奈川県川崎市高津区(2005年2月)





→拡大表示

ソメイヨシノよりやや遅れて咲く八重桜。
使用カメラ:FinePix F700  撮影条件:AUTO標準  ISO160 F7.1 1/340秒 撮影地:東京都世田谷区(2004年4月)



 それは、明治を目前にした江戸時代末期のことであった。

 江戸に住んでいた植木屋が、ある無名のサクラに“ヨシノザクラ”と名前を付けて『江戸で吉野のサクラが見られる』という宣伝文句で販売し、またたく間に人気を集めた。
 この“ヨシノ”とは、桜の名所として名高い奈良の“吉野山”のことなのだが、現在のように庶民が気軽に旅行などできない時代においては、秀逸かつセンセーショナルなキャッチコピーであったことはいうまでもない。

 しかし、その“ヨシノザクラ”という名前に、本家の吉野山からクレーム*2がついてしまった。そこで、あらたに付けられた名前が“ソメイヨシノ”だ。

 ちなみに“ソメイ”とは、植木屋が住んでいた村の名前“染井”(現在の東京都豊島区駒込周辺)からきている。余談だが、当時の染井村には植木屋が多く住んでおり、さまざまな種類のサクラを取り扱っていたそうだ。

 染井の植木屋が販売したソメイヨシノは、生育が早く、花もたくさん付き、接ぎ木で増えることから、爆発的な人気となり、江戸から日本全国へと急速に普及していった。

 こうしてソメイヨシノは幕末から明治にかけて日本全国に広まったのだが、現在のような“お花見”は、いつごろからおこなわれていたのだろう。


*注1:バラ科
正式には“バラ科サクラ亜科サクラ属サクラ亜属”。アンズやウメ、モモなどもサクラ属で、健康食品として注目されているプルーンもこれらの仲間。

**注2:本家の吉野山からクレーム
具体的なクレーム内容は不明だが、本家本元にしてみれば、吉野山のサクラがソメイヨシノと同一種と思われたくなかったのだろう。ちなみに吉野山のサクラの多くは“シロヤマザクラ”である。


→拡大表示

“染井”のソメイヨシノpart2。
余談だが、あの水泳の北島康介選手が所属している東京スイミングセンターも、染井通り沿いにある。
撮影/本小まゆみ 
使用カメラ:FinePix A203  撮影条件:AUTO標準  ISO100 F2.8 1/500秒 撮影地:東京都豊島区(2004年4月)





→拡大表示

良く見かける桜並木の「ソメイヨシノ」も、元々は、染井村の植木屋さんから全国へ広まった江戸時代末期のヒット商品。
使用カメラ:FinePix F700  撮影条件:AUTO標準  ISO160 F4.0 1/350秒 撮影地:神奈川県川崎市・宿河原親水公園(2004年4月)








桜キレイ撮りテクニック その8
変化する桜を記録する

満開の桜もいいけれど、季節や時間帯で変化する桜の様子を記録するのもまた違った楽しみがあります。例えば、朝・昼・夕・夜といった、時間経過の中でも桜はさまざまな表情を見せてくれます。つぼみ〜3分咲き〜開花〜葉桜までの開花の様子を記録したり、季節の変わり目ごとに撮っておくのもおすすめです。

※画像クリックで拡大表示

写真左から2月、4月、8月、11月と、桜の木の変化を同じ場所から撮影。並べてみると季節の移ろいを一目で実感させてくれます。 使用カメラ:FinePix F700 撮影地:東京都世田谷区・多摩川土手





Back 後編目次<--    -->Next サクラと花見は、日本の文化


後編目次【5】678 2005年4月掲載
表紙へ特集目次へ

このページへのリンクについて
Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部