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『フジカラーHG』や『ベルビア』とともに井駒さんの記憶に残る製品がこの『リアラ』(1989年発売)。特に肌色の再現性に優れ、フジカラー純正の『リアラ仕上げ』も指定できた。現在は改良版の『リアラACE』に発展している。
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1980年代は国産フィルムにとって名実ともに飛躍の時代だった。画像は常識を打ち破る高画質で話題をさらった「フジカラーHR1600」。ISO100のフィルムに対し、同じ光量で4段分速いシャッターを切ることが可能。
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撮影禁止・火気厳禁、ついでに喫煙も御法度の一室で、富士写真フイルム品質設計評価センター・井駒秀人さんのインタビューが続く。入社以来二十余年、ひたすらフィルムの高画質化に従事されてきた井駒さんにとって、記憶に残る製品は何だろう。
「それは、すべての製品に思い入れがありますが……そうですね、強いて言えば『リアラとHG400』(1989年発売)でしょうか。このシリーズにはまったく新しい乳剤技術を盛り込み、色の再現性や粒状性、見た目のシャープさなどを飛躍的に高めることができました。特に高感度版の『HG400』は、それまで画質面でエクスキューズが避けられなかったISO400フィルムを常用フィルムに変える画期的な製品だったと思います」
この高画質が評判を呼んだフジカラーHG400は大ヒットを記録し、それまで一部の愛好家にしか使われなかったISO400カラーネガフィルムの比率を一気に30%台にまで高める起爆剤となった。時をおなじくして大ヒットを記録した某ドライビールは“怪物商品”と呼ばれたが、こちらも立派なモンスターである。
「面白い逸話があるんですよ。HG400に先駆けて開発したSuper HR400(1986年)で、僕らはあの当時に普及しはじめたコンパクトカメラのズーム化を意識した。ズームは便利ですけどレンズが暗いでしょう。だからISO100クラスだと手ブレにつながるほどシャッタースピードが遅くなる場合がある。そこでシャッターを2段分速く切れるISO400の高画質化に傾注したのです」
「ところが、新製品発表会見で“このフィルムは『写ルンです』のために開発しました”と(笑)。ISO100のポケットサイズの写ルンですが評判になっていましたから、まぁリップサービスでしょうけれど、僕らフィルム開発陣はムッとしましたね(爆笑)。それも良い思い出です」
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