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「第4の感色層」を導入したフィルムにおける色再現の改善効果。赤末反射を持つ被写体(クレマチスの花びらと赤い服)の色が見た目に忠実に再現されている。こうした色再現の技術はフィルムのみならずミニラボ、そしてデジタルカメラの画質設計にも波及している。
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また「色再現性」という要素も単なる彩度や色調だけにとどまらない。例えば人工光源、それも蛍光灯で照明されたシーンを撮影する場合、10年ほど前のフィルムなら盛大に緑がカブって不自然な写真になったものだ。それが最新のフィルムでは、ほとんど気にならない程度にまで軽減されている。
「これはフィルム(のAgX粒子)が反応する光の波長に関係があります。蛍光灯の光は赤色光成分をあまり含んでおらず、旧来のカラーフィルム(デイライトタイプ)もその部分の感度が弱かったため、写真では緑や青が強調されたのです。現在のフィルムは人間の目に近い感度分布を持たせることが可能になり、見た目に自然な仕上がりの写真が提供できるようになりました。これを第4の感色層技術と呼んでいます。最初に導入したフィルムがリアラで、今では高感度ネガやプロ用ネガ、リバーサルフィルムにも採用されています。AgX粒子の感度アップの原資を色再現性の改良に振り向けた例ですね」
フィルムにおける画質設計の凄さとは、たんに表面的な画像操作にとどまらないところにある。それは直径わずか1マイクロ、千分の1ミリほどのAgX粒子(乳剤層1立方ミリあたり実に1200万個も充填されている)の構造や性質を変えるところから始まっているのだ。井駒さんたちのこの努力が「第4の感色層」を生み出し、そうした技術の積み重ねが「好画質写真」=人間の目に心地良い写真に結実し、デジタルフォトグラフィーの世界を含めた写真の豊かさにつながっているのである。
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*注:MTF(Modulation Transfer Function)
レンズ性能の指標となる評価基準のひとつで、レンズの結像性能を「被写体の持つコントラスト」の再現性に置き換えて評価するメソッド。 |
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